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稜に手を握られたままそう問いかけるも、稜は反応しない。 都合が悪くなったときだけ無視すんのか? そう思っていると稜が足を止め、振り返る。 「橙里のこと抱き締めんのは俺だけでいいんだよ」 「……っな……!」 不意打ちの名前呼びに、破壊力抜群な言葉。その言葉だけでノックアウトされそうだ。 真っ赤になった顔で稜のことを見ると、稜は優しく微笑んでいて。 「……おまえさ」 「なに……」 「俺に名前呼ばれんの好き?」 「へっ!?」 なんでばれてるんだ。 稜に言ったことはないのに、どうして。 「なんで?」 「ん? 俺がおまえの名前呼ぶとすげえかわいい顔するから」 「……」 「ほら。まだおまえに自由に手出し出来ないときに橙里って言うとブレーキ効かなくなるから、ずっとおまえって言ってたんだよ」 「……ソウデスカ……」 「俺もおまえに名前言われんの好きだよ」 「っもうわかったから!」 かわいいとか好きとか、急に稜の糖度が増して対応しきれない。

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