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本格的に寒くなってきて、両手を上着のポケットの中に突っ込む。 すると、その様子を見かねた稜が微笑んだ。 「寒い? なら、こっち来いよ」 「ちょっ……」 頭を稜の左手で撫でられ、稜に更に密着する。人通りが決して少なくはないこの通りで、こんなに密着するのはかなり恥ずかしい。 なのに、離れたくない。 「稜」 「ん?」 「撫でられんの好きだから……もうちょっとこのままで」 「……」 珍しく橙里が本心を露わにするようなことを言ったから、稜が驚いている。 稜の手つきが好きで、ついそう言うと頭を再度優しく撫でられた。 「何回でもやってやるよ、ほら」 「っわ、痛いって……!」 頭をぐりぐりとされ、その痛さについ笑ってしまった。 今の心境を一言で言うなら、幸せ。 もっと言ってしまえば、稜のことが好き過ぎる。 好き。 こんなたった二文字で自分と稜の関係を大きく変えてしまうなんて不思議でしょうがない。

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