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稜さんの憂鬱3
「重っ……これ、絶対幹さんのだ」
「幹……ああ、あの店長か……」
稜の中であの男は橙里に手を出すオネエ野郎という印象しかない。
それでも、橙里のことを大事にしているのだろう。悔しいけれど。
「うわ……アクセサリーだらけだな。しかも超高ぇぞ、それ」
「まじで? 大切にしよ……って、ん?」
橙里が一つの筒のようなものを取り出した。
──リップクリーム?
ああ、幹の狙いがわかった。
要するにもっと橙里のくちびるがぷるぷるになって、キスをしたときに柔らかい感触が味わえるということなのだろう。
──今度ワインでも渡すか。
「なんでリップなんか入ってんだろ。入れ間違えか?」
「……橙里のくちびるのこと気遣ってんじゃねえの」
「あ、そういうことか。そんなに荒れてる?」
「俺はそうは思わないけど」
かさかさしているわけでもない。ただ、キスし過ぎたあとには少しだけ荒れているから丁度いいのかもしれない。
ていうか、橙里のことわかり過ぎだろあの店長。
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