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稜さんの憂鬱11

「ふっ……んんっ、はぅ……」 「まだ半分も入ってねえけど。ほら」 「ひゃうっ! も、じっとしててっ」 上に腰を突き上げると橙里がかわいい声を出した。しかしそれも一瞬で怒られてしまった。 橙里に怒られた。 ああ、今なら好きな子にちょっかいをかける小学生の男の子の気持ちがよくわかる。 まあ、好きな子のこういう姿は誰だって見たいよなあと考えていると、橙里が腰を下ろし終えたのか「ふあ」と息を吐き出した。 「入った!」 「ん。じゃあ、動いて」 「……動いて、って……」 また橙里の顔が赤く染まる。稜の狙いがわかったのだろう。睨まれてしまった。 やばい。かわいい。 口元が緩みそうになるのを今まで従えてきた全表情筋を使って耐える。三十四年もの年月をかけて無表情という最強の兵器を手に入れたのだから、今こそそれを使うべきだ。 ──俺……本当に頭おかしくなった。 橙里に稜の心の中を読まれていたらどうしようかと考えていると橙里がついに腰を動かし始めた。 写真、撮ってもいいかな。

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