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蒼樹×羽村
それは、二人でゆったりと休憩しているときに唐突にテレビから流れてきた。
『身体の関係から始まる恋はあり? なし?』
「……いや、ありでしょー」
問いかけるようなタレントの声に、羽村が無意識といった様子でそう反応した。
身体から始まる恋、とは。
「それってあれですか? セックスして好きになってもうたってやつですか?」
「そうゆうことだと思うよ? え、蒼樹はなし?」
「俺は……正直なしやなあと。だって、好きやないのにセックスしはるってことは身体目当てっちゅうことちゃいます?」
戸園の言葉に、羽村がうーんと首を傾げた。そんなに真面目に考えることではないというのに、こういうところでは真面目なのだ。
──まあ、桐野さんらしいっちゃらしいんやけど。
そういえば、言ってしまえば橙里と稜も身体から始まっていた。
端から見たら既に恋人同士のように見えてしまっていたが、本当にくっついてからは二人から幸せオーラが漂っている。
「てか……ももちゃん、最近エロくなったよね」
「……エロく、って……まあ、言われてみればそうですな」
ふとした瞬間、フェロモンらしきものを纏わせているときがある。
絶対に稜の影響だろうが、橙里でそうなら。
「桐野さんもそうやないですか?」
「え"。いや、俺は違うでしょ」
「そうやなぁ……例えば、細い腰とか色っぽい声とかうるうるしてる目とか」
「ばかっ。それ全部エッチしてるときじゃん」
「ああ、俺は桐野さんの全てが好きやけど?」
「……」
そう甘い言葉を囁くと、羽村が黙り込んでしまった。隠しきれていない耳はかわいらしく真っ赤に染まっている。
──かーわい。
こんなことを口に出したら羽村は怒ってしまうだろうか。恥ずかしがってしばらく口を聞いてもらえなくなるだろうか。
困り果てる羽村の姿を想像するだけで顔がにやけてしまう。
幾つも歳が離れたこの人のことが、本当に好きだ。
心の中で、自分の恋人を愛しむ戸園だった。
追記:新作公開しました!
Thank you for reading!
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