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甘い休暇4

「なんの話してんの?」  戸園と、朝からするべきでない話をしていると矢本がやってきた。  まずい。この男が乱入してくると話の方向が一気にゲスくなっていく。  ただでさえゲスいというのに。  そんな橙里の予想はもちろん的中。 「抱かれる側と抱く側の話しとったんです」 「へー……そうなんだ。橙里さんは絶対抱かれる側だよね」 「そうだけど。樹はやっぱりやる側だろ?」  こちらが訊かれたのだから、橙里が矢本に向かってそう訊くのはおかしいことではない。  この間、矢本本人がそう言っていたのだし、なにもおかしいことはないはず……なのだが。  どうしてだろう。  矢本が急に目をきょろきょろし始めた。  ……いや、まさか。まさかな。 「……だと思うじゃん?」 「え?」 「ん?」  やけに含みを持たせた言い方に、橙里も戸園も疑問に思った。  ……すると想像通り爆弾を落としたのだ。 「なんか最近、俺やられる側なんだよね……」 「……はは、樹。冗談はよくないぞー」 「や、ほんとに。なんつーんだっけ。リバだっけ」 「あ、はは。面白いこと言うんやなあ」 「何言ってんの、蒼樹さんまで」  あれ、脳が誤作動でも起こしたのだろうか。  勝手に脳が変換してるのか? 馬鹿な脳だな。正常に動け。  ……って、僕はなにを……  情報量が多くて頭がパンクしてしまいそうだ。 「まじー……? 瀬島さんが樹のことをなあ……えー、へえ……」 「上手い?」 「やばい。めっちゃ気持ちいいよ」  気のせいだろうか。矢本の目がキラキラしている。いや……気のせいではない。  脳が勝手に補正しているわけでもない……  戸園も戸園で、普通上手さとか訊くか?   ぷ、プライバシーというものが欠如しているぞ、全く。 「言葉攻めめっちゃしそうやな。そうなん?」 「よくわかるね。あのひといい声じゃん? 耳元で囁かれたとき意識飛ぶかと思った」 「いくら営業時間外だからといってそういう話は……よく、ないんじゃないカナー」  だめだ。今の彼らには言葉が届かない。

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