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甘い休暇6

「……すご、海だ」 「あんま見ねえからな。腰は平気か?」 「限界突破」  ついに、稜とのデートが幕を開けた。    あの『おしおき』はとにかくすごくて……気持ちよかったはよかったけど、男としてのなにかを失った気がする。  あれから矢本は橙里のデコピンを額に食らって涙目になっていた。申し訳ないって思ったから抱きしめたら、そのタイミングで丁度美容室にやってきた瀬島にチョップされた。  ……痛かったな、あれは。  腰はおかげさまで満身創痍だ。痛みを通り越してなにも感じなくなった。  ということは、治ってるということか。ならいい。  助手席から携帯で海の写真を撮っていると、稜が車の窓を開けてくれた。  やや冷たい風だけれど、気持ちいい。 「わー……潮の香りがすごい」 「だな。旅行って感じする」 「ね、綺麗」  稜の顔を見ようとして身体を捻ったことを後悔した。  なぜなら、風に煽られて髪が靡いている稜が最高にかっこよかったから。  それだけならまだいいのだが、橙里のことを優しく見つめていて、その顔がどうしようもなく男前だった。  反則。  こっそりそう呟く。  何度も見ているはずなのにまだきゅんとしてしまうなんて……若いな。自分も。  口を手で覆っていると、稜が橙里の頭を優しく撫でてきた。  え、稜さん。 「そんなに俺の顔好き?」 「え、好き」 「あっそ。俺もおまえの顔好きだよ」 「……顔かよ」 「中身もな」  コンビニで買ったコーヒーを飲みながら稜が言う。  反則通り越してレッドカードだ。そんなことを車内で言われたら、誤魔化しようのないから……  もちろん橙里だって稜の全部が好きだ。けれど、見た目ありきで中身も好きになったから堂々と中身も好きだと言える稜が羨ましい。  橙里が稜のことを照れさせる日が来るのはまだまだ先のよう。 「……稜さん」 「なに」 「僕に対してきゅんってしたことある?」 「割と」 「まじか」  気づかなかった。せめてきゅんとしたときに顔に出してくれればこっちもわかりやすいのに。  この、イケメンめ。

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