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甘い休暇9
鍵を受け取ったので稜からは即座に離れ、まるで何事もなかったかのように歩く。
すると稜が橙里の顔を凝視してきたので、橙里もそれを見つめ返す。
「なに?」
「いや。まさかこんなに独占欲がわかりやすいとは思わなかった」
「なっ……! だって、さっきの人絶対稜のこと見てかっこいいって思ってたし、絶対好きになってたし」
「ねぇだろ」
あるんだよ。
色気だだ漏れでイケメンで背高くてちょっと無愛想って、女の人はたまらないんだろうな。
橙里だって、自分が女だとしたらそういう男には確実に惚れている。
もうちょっと、稜には自分がモテるということを自覚してほしい。というか、しろ。
「……あのな、橙里」
「なっ、なんでございましょう」
くだらないことを考えていると急に名前を呼ばれたので、ばっと稜の方を見る。
少しだけ眉を下げ、微笑んでいる稜が限りなくかっこいい。
何度も見ているはずなのに、やはり慣れない。心臓がかなり速く動き始めた。
「俺に一目惚れしてるとかふざけたこと言ってやがるけど、おまえだってされてるんだからな」
「はあ? ありえないだろ。だって僕だぞ?」
「おまえ、もっと自分が男や女を惑わしてるって思った方がいい」
惑わす? 橙里が?
ううん、と考えている橙里の顔は確かに色気があり、幼い感じもありつつ年下の人間を少なからず魅了している。
だが、そんなことに橙里は当然気づくことはない。
無自覚だからこそ、さらに人々の目を惹き付けてしまうのだろうが、それが稜は時々腹立たしくなる。
「ありえないって。そもそも、僕に色気があったとしても全部稜に吸い取られてるから」
「っは、あと数年もしたらそんなものなくなる」
「なくなんないし!」
「わかったわかった。ほら、入れ」
喚く橙里を軽くあしらい、稜が部屋の中に橙里を押し込んだ。
橙里はバランスを崩しながらもなんとか建て直し、部屋を見渡す。部屋に設置された巨大な窓からは、先程車からも見えていた綺麗で澄んだ青色の海が広がっていた。
「う、わ……」
かなり綺麗だ。
さっき稜と話していたことなどすぐに忘れてしまうほど、目を奪われてしまう。
「やば、綺麗すぎる」
「そうだな」
稜も隣にやってきて、海を眺めていた。
イケメンと海のセットは目が喜ぶ。
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