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あの二人1
※一人称です。
※樹目線。
※番外編なので割とふざけてます。
構わん! という方は↓
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「樹さあ、ワイン好き?」
閉店をし、片付けをしているときに唐突に橙里さんにそう聞かれた。
柔らかく、芯のある声がよく響く。
ワイン……ワインか。
「飲めないことはないけど、好きかって言われたら微妙」
「ふーん。なんか、うちにあるワインが量多くなってきたから消費するんだって。僕酒だけはほんとにだめだから……」
「……ああ」
渋い顔をしながらそう言う橙里さん。多分、過去になにかしらやらかしたんだと思う。
推測でしかないけど。
俺は酒で悪酔いしたことはないし、ワインだって嫌いじゃない。
これで断っても他の人を誘うんだろうし、そうされるくらいなら、まあ。
「いいよ。飲む」
「ありがとう。あー、でも瀬島さんに連絡しなきゃな」
「俺やるよ?」
「馬鹿。僕が樹を借りるんだから僕がするのが礼儀だろ」
「借りるって」
つい、笑ってしまう。
この人はいつも抜けてるくせに礼儀だとかマナーは最高にいい。
あと、モテる。
橙里さんは割とまじで自分がモテることに気づいてないから、本当のアホなんだろう。
あんなにお客さんが見つめたりたくさん話しかけてるのに、それをひらりひらりと躱すから見ててじれったくなる。
電話をしている橙里さんの横を通って、箒を手にして床にたまったゴミをよけていく。
すると、閉店しているのにドアが開く音が聞こえた。
あ、また来た。
最初は「え?」と思ったけど、今では橙里さんの彼氏……稜さんが遠慮なく入ってくるのは日常茶飯事。
悪びれもなく来るんだから、すごいよなあこの男。
「……矢本なんたらってやつ?」
身体の奥に響くような重低音が俺に話しかけてきた。
うわあ、これは女の人イチコロでやられるわ。
なにこの人。やっぱイケメンすぎ。
なんで一般人やってんの?
「そう、ですけど」
「ふうん」
「……何か?」
「酒強い?」
「まあまあっす」
「ならいい」
会話終了。
やべえ、俺この人と意思疎通できる自信ない。
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