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あの二人4
稜さんに軽く睨まれて、とりあえず肩を竦めながら二人についていくことにした。
いつまで乗るんだ、というくらいエレベーターに乗り、案内された部屋に入るととにかくびっくりした。
「うわ、玄関が既に広い」
「だよなー。僕も最初びっくりした」
うんうん、と俺の言葉に何度も頷いた橙里さん。
あ、そっか。稜さんのとこに橙里さんが居候してるみたいなものだって前言ってた。
さりげなくスリッパ出してくれるとことか、すげえ。人間として完璧すぎかよ。
靴を脱いでスリッパを履き、リビングのような所に来ると更に驚いた。
「広っ! ていうか、なんかいい匂いする」
「するのか?」
「はい。うわー、ソファも大きい!」
稜さん金持ちなんだな……すごいな……
失礼を承知して、ソファに座るととてもふっかふか。柔らかい何かに包まれるみたいでとっても気持ちいい。
「あー……寝れるー……」
「……おまえ、結構遠慮しないんだな」
「それが樹のいいとこ」
稜さんが俺の行動を見て苦笑して、橙里さんがそれを見上げてにこっと微笑んでいる。
夫婦かな?
とりあえず立ち上がるために太ももの横に手をつくと、なんだか硬いものがあったので、ソファの隙間に手を入れる。
……すると、明らかに使われているローションのボトルとコンドームの箱が出てきた。
……ええ?
「あの、これって……」
「ん? ……は!? ちょっ、なんでローションとゴム持ってんの!?」
「だってソファにあったんだもん。へー、0.02かあ」
「せっ、セクハラー!」
「……セクハラは年下が年上にやって成り立つものなのか?」
恐らくこれをここに入れたのは稜さんだろうけど、かなり飄々としている。
え、この人悪びれないのか。まあそうか。
「くっそ……ソファで押し倒された時ローション必ず持ってるけど、そういうことか……だから稜……はあ……」
いや、さりげなくエッチ事情話さなくていいんだけど。
でもさ、俺ちょっと聞きたいことあるんだよね。
「稜さんいつもこのローション使ってんの?」
「ああ、特にこだわりもないしな」
「この赤いラベルのやつより緑のラベルのやつ使った方がいいっすよ。そっちの方が滑りがいい」
「へえ、それは知らなかった。詳しいな」
「でしょ? てか、ゴムこれなんだね」
「厚いの嫌いなんだよ」
「……まっ、待ってくれ。その話するなら僕がいないとこでやれっ!」
橙里さんが顔を真っ赤にしながら、俺と稜さんの頭を同時に叩いた。
多分、今だったら稜さんと意思疎通する気がする。
橙里さん、かわいい。
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