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あの二人8

「あと、稜さんって玩具とか持ってる?」 「そんなに持ってねえな。持ってることは持ってるけど」 「……てことは、稜さんは自分のやつでがつがつやるのが好きなんだ」 「まあな」  玩具は使わないのか……いや、ショック受けてるわけではないけど!  確かに橙里さん、玩具とか嫌いそうだし。稜さんも稜さんで好きじゃないんだな、きっと。 「樹は?」 「俺は人並みより少し多いくらいかな。最近はなんか受けに回ってるからあれだけど」 「ふうん。受けが攻めをやりたがる季節なんだな」  えっ、てことは稜さん。  は? まじで? 橙里さんに抱かれたってこと? 「稜さ……」 「いや、俺は抱かれてねえから」 「……よかったあ」  稜さんは橙里さんを抱いてるだけでいい。  まあ……橙里さんが稜さんのこと抱いてるのも全然ありだけど。想像するだけで鼻から流血もんだけど。  橙里さんの腰細いし。  振ったらエロそう……って、やべえ。これ以上は想像するのやめよ? 「……実は橙里さんに抱かれたいとか思ってます?」 「抱かれたい半分、抱かれたくない半分」 「それは抱かれたいってことでおっけ?」 「なんでだよ」  稜さんが俺の肩を叩いてきた。ほお、こんなノリをする人だったとは。  そう言いつつ実は抱かれたいって思ってたりしたら面白かったんだけどなー?  からかえるし。  すると、何やらキッチンの方から声が聞こえてきます。 「……なあ、さっきから何コソコソやってんの?」 「え、橙里さん嫉妬?」 「ばっ……か! んなわけっ」  嫉妬してる。かわいいー。  キッチンから睨みつけてくる橙里さんをニヤニヤしながら見ていると、隣から慈愛オーラが出てきた。  恐らく稜さん。  橙里さんのことかわいいって思ってるよねー、そうだよねー。  こんな近くで美男美女の絡み見れるとか。幸せかよ。 「そろそろできたから。稜運んで」 「わかった」  稜さんが橙里さんに呼ばれてキッチンに向かった。  その後ろ姿をソファに座るふりをしてこっそり目で尾行していると、橙里さんが稜さんにこそっと呟いた。  口の動きから察するに、「……樹は僕のだし」と言っている。  ……え、橙里さんは俺を取られると思って嫉妬してたの!?  うわ、久々キュンってきた。  そして稜さんが橙里さんの頭を優しく叩いたかと思えば、ほっぺにちゅっとキスをしました。  それに橙里さんがまるでさくらんぼのように頬を赤く染めます。  ……夫婦だなあ。  なーんて思いながら見ていると、橙里さんがこっちに気づいた。  あ、やば。なんかキツめなこと言われるかな、と身構えていると橙里さんが。 「……こっ、こんな男に騙されるなよ! 樹は僕の後輩なんだからな!」 「……ぐはっ」  本当の悩殺とはこのことを言う。

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