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あの二人10
すると、今まで俺の前に座っていた稜さんが隣に座った。
元々橙里さんが座ってた位置だから、稜さんが座ると少し変な感じがする。イケメン万歳。
「っ、はあ……あいつの酔い具合はどうにかなんねえかな」
「たぶん無理ですね。ていうか、あんな橙里さん初めて見た」
「……へぇ」
いつもはきりっとしているから。
ああいや、もちろん少し緩いところとか少し子どもっぽいのはわかっていたけど。酔うとき、あんなに面倒なんだ……と思った。
意外な一面、というわけでもないけど見れて嬉しい。
「あの人、稜さんの前だとあんなに甘えたがりなんすねー」
「そうだな……おまえも俺の気持ちわかるだろうが、近くにいると我慢の連続だよ」
「……わかる。こっちはやる気まんまんなのに向こうは一切そのつもりがないときの虚しさがね」
特にねー、こっちが性欲でギラギラしてる時はやめてほしいよねー。
頭の中でセックスしたいってことしか考えられなくなるし。
「でも、そういうとこが好きなんでしょ?」
「……ったりめえだろ」
稜さんが橙里さんのこと嫌いなはずがない。
そう思って訊いてみたら、男前な解答が返ってきましたよ奥さん!
この人見た目だけじゃなくて中身も男前かよ……完璧かよ……
ていうか、欠点ひとつもなくね? え、実はだらしないとかなくね?
男の敵……
だけど、言うほど敵って感じはしねえんだよなぁ。寧ろ崇拝したくなるわ。
「逆にあいつのこと嫌いな人間なんかいるのか? いたら絞める」
「なんか、絞めるって発想が橙里さんと同じ」
「なにかされた?」
「ほら、稜さんが美容室に忘れ物届けに来た時、幹さん橙里さんのこと担いでたじゃん。そしたら俺に矛先向いてデコピンされたんすよ」
それを話すと、何故か稜さんが笑った。
笑う、というより……微笑む?
「……あいつのデコピンは痛ぇだろ」
「痛い。泣きそうになったよ成人してんのに」
「あいつの指の力半端ねえからな……」
稜さんもご存知でしたか。
「ちなみに俺もされたことある」
「えっ?」
「あいつが疲れてるときに頭撫でたり服脱がそうとしたりしてたら、された。すげぇ痛かった」
……いやいやいやいや、何、その頭撫でたり服脱がそうとしたりっての。
あれか、かまってちょーだいってやつか。
稜さんがかまちょとか、ちょっとかわいいんだけどー! 反則ー!
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