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あの二人11
……待って、稜さんの目線が冷たい。あれ、声に出てた?
「……表情に出過ぎ」
「あ、よかった。口には出してなかった……」
「かまちょ、とはな」
「ぎっくぅ……!」
あっ、あっ。
稜さんの口からかまちょってワードが出て嬉しいけど……!
俺、終了のお知らせ。
「いい度胸してる。どこがそうだと思った?」
お顔がニヤニヤしてる。
さては……稜さん、今のこの状況楽しんでるな? ああくそ、正直に言わないとだめか。
「だって橙里さんにちょっかいかけたんでしょ? それでデコピンされたんでしょ? かわいい」
「……あ?」
「かわいい」
「誰が」
「稜さん」
「なんで」
「い、今言った……!」
もしかしてもしかしなくても、禁句?
……あ、あれ。せなかにへんなあせが。
内心産まれたての子鹿みたいにがくぶる震えていると、稜さんがふっと微笑んだ。
……え……?
「面白いな、おまえは」
「……まじ?」
「橙里が気に入るのも頷ける。橙里が独占欲働かせるわけだ」
ど、どくせんよく。
橙里さんが俺に独占欲は向けないと思うよー。たぶん……たぶん。
橙里さんは稜さんのものであってこその橙里さんだもの。
「ただ、」
「……ん?」
「あいつが気に入ってるのは、俺も『味』を知りたくなっちまう」
「……えっと?」
あは……はは、気の所為かな?
なんか稜さんの顔が……近い、ぞー。
お顔綺麗。素敵。……じゃなくって。え、これ若干押し倒されてね?
稜さんの両手が俺の腰を挟むように床について……って、ああああ!
「稜さん、酔ってます?」
「いや。正常だ」
「……あ、はは。面白い冗談っすね」
「冗談ではない」
少し退くと、またさらに迫られる。
鼻が触れそうです。え、この状況誰得だよ。
「逃げんの」
「……そりゃそうでしょ。ッう……稜さん、正気に戻ってくれ。頼むー!」
何故俺の顎下を撫でる。
本当、洒落になんねえから。もっかい言う。誰得だ!
誰も期待してねえよこんな展開! だから稜さん……今すぐ俺の上からどいて顎の下を撫でる手を止めろおぉぉぉ!
「あなた、橙里さんのもの。わたし、他の人のもの」
「だから?」
「これ、浮気」
「バレなきゃいいんじゃねえの。今、これで誰か来るとでも? 諦めろ」
「ぎゃああああぁぁ!」
稜さんの顔がほぼゼロ距離だよ!
これ……キ、キッ……!
「樹」
「いっ、ひぇ……」
「『味見』を、させろ」
橙里さぁーん!
ごめんなさーい!
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