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あの二人13
「……まあ、こんな感じかなあ。……って、稜さんめっちゃ顔緩んでるけど」
「っ、ああ、悪い……」
かれこれ橙里さんのことを話して一時間弱。てか、一時間弱も話すことがあるって、どーよ。
稜さんの顔が放送禁止レベルでにやけている。大丈夫かな、これ。
ワインをぐっと飲み込む。
酒には強いけど、長時間連続して飲んでいたらさすがに酔いも回るか……
明日が休みでよかった。
「っくそ……襲いてぇ」
「だめっすよ。俺いない時にやって」
「耳塞いでろ」
「塞いでも聞こえるもんは聞こえるだろ!」
立ち上がろうとした稜さんの腕をつかんで慌てて止めた。
さすがに先輩の喘ぎは聞きたくないってばよ。
ただ、稜さんが止まんねぇ!
「あんた酔ってるだろ!」
「は? 俺がこんな量で酔うわけねえだろ」
「目が据わってる! てか、ワインボトル七本も開ければこうなるよ!」
「黙ってろ。ヤってくる」
「やめろ! じゃあ聞くけど、あんた職場の先輩の喘ぎ声聞けんのか!?」
「先輩はおっさんしかいねぇ。耐えられる」
「耐えられるとかの問題じゃなくてっ……あーっ!」
腕に捕まったまま引き摺られる。
この人どんだけ橙里さんのこと好きなんだよ! 梃子でも動かねえ!
おとっつぁーん!
「りょっ、稜さん。さすがにいい大人が夜這いは……ね?」
「おまえもするだろ」
「すっ、するけど! 俺まだ二十二だし!」
「俺だって三十四だよ」
「さっ……あんたまじで若く見えるな……って、ちがーう!」
こんな若く見えてイケメンな三十四歳がいていいのだろうか、否。
ていうか、寝室近づいてね? やばくね?
このままじゃ俺も混じりに行くみたいじゃん。なんとか……稜さんを、止める!
俺は急いで立ち上がって、稜さんの腕を掴んだまま壁際に引き寄せ、稜さんのことを壁際に追い詰めた。
簡潔に言うと、壁ドンですね。
「頼む。やめてください」
「そんなにあいつが嫌か」
「……後輩がいるのに始めんのはどうかと思うよ」
「俺に我慢しろ、と」
「当たり前だろ……」
寝室が近いのでなるべく小さな声で話す。
人生でこんなイケメンを壁ドンする日が来るとは思わなかったよ……そろそろやめよう……
稜さんが諦めたので、離れようとしたその瞬間でした。
寝室のドアが、がちゃりと開きました。
「あー、くそ頭痛ぇ……水……って、樹と……稜……?」
酔いが覚めたらしい橙里さんが起きてきました。
……やべえ。
「え、何してんのおまえら……なんでここに? てか……ぇぇぇええ!?」
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