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あの二人14

「樹ー。起きろー」 「……ぅん……」  あれ、美声が聞こえる。  眠気を我慢して重い瞼を開けると、そこには俺のことを起こす橙里さんがいた。  丁度橙里さんの後ろから朝日がさしていて、橙里さんの薄い茶色の髪がキラキラ透けていて…… 「女神?」 「頭やられてんな。起きろ」 「いって」  口から本音を漏らすと、橙里さんに頭を叩かれた。昨日はあんなにかわいかったのに……  そう。あれから、俺と稜さんが少女マンガさながらの状況になっているのを目撃した橙里さんは余程衝撃だったのか失神した。  初めて目の前で失神した人見たわ……  つか、二日酔い。 「ありがと、起こしてくれて」 「ん。いいな、樹はすぐに起きてくれて……」 「……稜さん起きないの?」 「そう。清々しいほどな」  意外。あの人もさすがに朝には弱いんだな。  欠伸をし、目にかかる前髪をばさっとかきあげると橙里さんが何故か少しだけ目を見開いた。  橙里さんのことを横目で見てみると、さっきより幾分か柔らかい表情になっている。 「樹、ほんとに顔整ってるよなぁ……モデルとかなればよかったのに」 「写真嫌いなんだよね。今の俺は今しかいねぇじゃん?」 「……ぶはっ。まあそうか」  ほんのちょっとした冗談を言って、起き上がる。  上質な掛け布団を元の状態に戻すために皺を伸ばし、綺麗な状態にすると橙里さんが。 「……へー。ちゃんとしてんだな」 「え、普通じゃない?」 「稜といて感覚が鈍ったかな……」  ぺちぺち、と頬を叩く音が聞こえる。  そりゃあんなイケメンと一緒にいたら感覚行方不明になるよ。俺も稜さんのペースについていくので精一杯だったし。    でも、昨日は楽しかったな。  ああいう年上の人と酒飲む機会とかあんまりないから、新鮮で。  またああいう話できたらしたい。  ……橙里さんの話以外がいいけどね。 「じゃあ、僕は稜起こしてくるから。先にソファで座ってて? 水色のマグカップにコーヒー入ってるから、それでも飲んでろ」 「ありがとー」  すたすたと歩いてリビングに向かう。ドアを開けた瞬間コーヒーの苦味がある香りが鼻を抜けた。  お、これはいい豆使ってる気配。  ソファに座らせてもらい、試しに一口。 「うっ……ま」  いい豆使えばコーヒーめっちゃ美味い。淹れ方も上手なのかもなあ。とにかく、美味。  ゆったりとコーヒーを楽しんでいると、バタバタという音が。  なんだ……? 「おーきーろー! 樹は素直に起きたのに……! 僕はおまえの母さんかっ!」 「おまえ俺のこと生んでねえだろ……寝る」 「ぁあん!? 寝るなー!」  ……毎朝これやってんの?   だめだ……勝手に笑いが出てくる。橙里さんも大変だな。 「そもそも母親とキスとかしねえだろ。頭大丈夫か?」 「た、例えに本気で突っ込んでんじゃねー!」 「っぶ……!」  限界だ!  口の中でコーヒーが暴れる!

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