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あの二人15
マグカップを机の上に乗せ、口を押さえながら身体を痙攣させた。
漫才師並に面白いんだけど……! あの人たちいつもあんな最高なやり取りしてんのか……
二人の言い争いはまだ続くようで。
「樹はすぐ起きてくれたのになー、なんで稜は起きないのかなー!」
「あいつと俺比べんなよ……あいつはいい奴すぎんの」
「んなの僕が一番わかってるっつの! わかった風な口聞くなぁ!」
「うるせー……寝させろ……」
「……」
お、橙里さんが諦めたか?
少し期待しながら先を待っていると、橙里さんが勢いよく俺のところにやってきた。
え、小動物みたいでどちゃんこかわいいんだけど。
「樹。ちょっと来て」
「なに?」
「いーから」
背中をぐいぐいと押されて、されるがままに動く。恐らく……稜さんの寝室に向かっているんだと思う。
やべぇ……俺を盾がわりに使おうとしてる。この人。
かわいいから許すけどさあ。
「うおっ」
「は?」
とある部屋にぽーいと押し出され、躓いてしまった。
なんとか転ぶのは耐えて声が聞こえた方向を見ると、なんとそこには上半身裸の稜さんが。
……え、筋肉やば。
なんで朝からフェロモン出してんの?
引き締まった身体に、整いすぎた顔に……一体神様は稜さんのことをどれほど気に入ってんだろう。
くそっ、わからねぇ!
「なんで樹来てんの」
「僕が連れてきた」
「は? なんで」
「樹ぃ……頼むから、稜のこと起こして……」
橙里さんが耳元でそう囁いてきた。
と言っても俺の方が背高いし、橙里さんが背伸びしたとしてもようやく首元に口が届くくらいだから厳密には耳元ではないんだけど。
多分、稜さんよりも少しだけ背は高いと思う。
それは置いといて、稜さんをどう起こそうか……
「えっと、稜さん」
「なに」
「今起きてくれたら、橙里さんがぬいぐるみ抱えてお昼寝してる写真あげますよ」
「起きる」
かかった時間、わずか五秒。
後ろで橙里さんがびっくりしていた。……けど、すぐに素を取り戻した。
「は!? なんだよそれ……とっ、盗撮!」
「いいじゃん、たかが寝顔なんだし」
「じゃあおまえ僕に裸の写真撮られても『いいよー』とか言うのか!?」
「……それは極端だよ」
「極端だな」
背中をぽかぽかと叩かれている。
いや、別に……その、叩くのは構わないよ。構わない……けどさぁ……
「そういうかわいいことは稜さんにしてたげたら?」
「は?」
う、後ろから殺気がー!
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