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全て2

「稜さ、また告白されただろ。んで、振っただろ」 「……見てたのかよ」 「山本が見ろって言ったから。てか、あの後女の子泣いてたんだもんわかるだろ」  教室にて。窓に肘をかけ、頬杖をついて稜のことを見つめる幼なじみ──橙里が、そう言った。  シャープな顎に、白い肌と高い鼻。どこか上品さを感じさせる綺麗な顔立ちのくせに、言葉は少し乱暴。  ……けれど、本当は甘えん坊で優しいのも知っている。  この男よりも綺麗な男なんて、この世に存在するのだろうか。  稜は、橙里のことを見つめながらそう思っていた。 「……おまえだったら、どう返す?」 「は?」 「告白されて」  稜の問いかけに、んーと唸るように声を漏らした橙里が、窓の景色を見つめた。  横顔もまた美しく、鼻筋が強調され長い睫毛も際立っていた。  ふ、と目を逸らす。これ以上見ていては、自分の中の理性がなくなってしまいそうだったから。 「僕だったら……『ごめんね。君が素敵っていうのはわかってるけど、今はそういう気分じゃないんだ』って言うかなあ」 「それを俺が言ってたら?」 「……ぅえー。引くー」 「……」 「ぃぅ……! ごめんなさいーっ!」  あまりにも顔を歪ませてそう言ったものだから、頭を掴んでやった。  すると、悲鳴に近い声を出してから稜の手首を掴んできた。力を緩ませると、ほっとしたように稜の顔を見てくる。  僅かな加虐心が稜に主張してきた。  少し涙目になったこの顔が、ベッドの上になるとどれだけ官能的になることか──    手を離すと、橙里も自分の手首から手を離す。そこで、掴まれた箇所が熱を持っていることに初めて気づいた。  繊細で柔らかい橙里の髪の感触を残すように、その手の甲で顎を支えて橙里から目を逸らした。  机に橙里の腕が乗り、膝同士が触れる。  橙里は全く意識していないだろうが、これだけで反応してしまいそうになる自分が憎い。  ほんの少しの間だけ沈黙が続き、橙里が思い出したように口を開く。 「ほんとに稜は女子に興味ないんだなー」 「……まあ」 「顔交換しよ」 「嫌」 「……ぐっ」  橙里の顔なんかになってしまったら鏡の前から離れられなくなるだろう──そう思い、拒否したのだが。  橙里は、男にとてつもなく人気がある。だから、自分が男に掘られる想像をして寒気に襲われた。  影で橙里のことを狙っている奴を成敗している稜の身にもなってみてほしい。 「あー……」 「何」 「いや……僕も今日、放課後呼び出されてたんだった」 「……男か」 「おう」  また男に……今月だけで四人目じゃねえか。まだ月が始まって十日ほどしか経っていないというのに。  全く……絶対橙里の顔にはなりたくないものだ。  今日も見張ってないとな。  振られた相手が橙里に手を出しかねないから。ああ……面倒だ……  ───いっそのこと、俺のものにしてしまいたい。

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