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全て4
そんなやり取りがあった、数日後。
橙里と共に登校し、靴箱に靴を入れると上履きに手紙らしきものが入っていた。
今時、こんなものを入れる輩がいるのか。
橙里に見られないようにスクールバッグの中に入れ、教室に向かう。橙里にバレてしまっては面倒だ。
「なー、りょおー」
「何」
「昨日高木先輩のこと振ったら『一回でいいから抱かせてくれ』って言われたんだけど」
「……」
見張っていたから知っている。
隣で見ていた山本が吹き出しそうになっていたのを無言で収めていたから、よく覚えているが。
「で?」
「家帰った後に夥しい数のメールが来た。高木先輩から」
「内容は」
「『北見くんに抱かれてるなら、僕だっていいでしょ?』って」
「……」
実際のメールの文まで見せてきやがった。
──抱いてねえし、抱きたくてもできねえし。
とんでもない勘違いをしているなら、訂正した方がいい。そうじゃないと勘違いされたままで更に面倒になる。
「訂正しとけ」
「したよ」
「……」
「『嘘つかれたら余計に傷つくよ』だって。嘘ついてねえよ! つか、僕のアドレス教えた奴誰だよ!」
これは、結構大変なようだ。
橙里のアドレスを勝手に教えたのは、恐らく。
「山本じゃねえの」
「……何?」
「高木って野郎と同じ部活だったらしい。山本が面白がって教えたんだろ」
「シメてくる」
今のは推測でしかないが、橙里が見たこともないくらい早歩きで教室に向かった。走らないのが橙里らしい。
山本に心の中で謝罪をし、橙里の後を追って歩く。
その途中で手紙の存在を思い出し、歩きながら内容を確認する。
よくあるラブレターみたいなものだと思っていたが、どうも内容がおかしい。
──俺と橙里の絡みを見て萌えています……? 尊い? 推しCP? ……なんのことだ。
思わず立ち止まり、壁に背中を預けてその内容を理解しようとする。
書いてあるのは日本語なのに、まるでその内容がわからない。理解不能だ。
しかも、女からのものではない。男からだ。
恒例の、呼び出しで終わっている手紙を折りたたんで仕舞い、封筒に入っていた写真らしきものを取り出す。
「っ……」
それは、どこで撮ったのかはわからないが購買で売っているパンを口いっぱいに頬張っている橙里の写真だった。
か、かわ……
ハムスターみたいになっている。しかも、美味いのかなんなのか幸せそうに、言い換えるならば間抜け面をしている。
もしかしたら、かわいいという形容詞はこの写真、または橙里のためにあるのかもしれない。
そう思わせるには十分のものだった。
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