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全て5

 その写真をそっと制服の胸ポケットの中に入れ、手紙を改めて見直す。  どこのどいつがこんな手紙を寄越したのだろうか。  年上か同級生か年下か。  いずれにせよ、恐らくまともな奴ではないんだと思う。  ──そもそも、なんで手紙なんだ……? *****  約束通り、昼休み。  軽めに昼食を取ってから指定された人気の少ない場所へ行くと、既に生徒がいた。  予想通り、やはり男だ。それも、かなり小柄で。 「おい」 「はうっ! ……あ、北見先輩!」  効果音がつきそうなくらいの勢いで振り向いてきたのは、中々かわいらしい顔立ちをした男子だった。  半袖のワイシャツの袖にあるラインの色からして、一年生。  まあ、口ぶりからしても後輩だとはわかるが……今まで一度も話したことがない。  会ったことがあったか? それとも、自分が忘れてしまっただけなのか。 「ふわああ……やっぱり生徒投票(非公認)で選ばれた抱かれたい男第一位は違いますね……! ピンクの花びらがひらひらしてます!」 「は?」 「あふっ! イケメンからの「は?」頂きました! ありがとうございます!」 「おまえ、大丈夫か?」  早口で声が甲高くて……聞き取れるは聞き取れるが、いちいち言葉を理解するのに疲弊する。  花びら? 今九月だぞ?  なんだよ、生徒投票(非公認)て。勝手にやるなよ……  しかもやたらと目がキラキラしている。男、だよな? 「はあ……なにかと思えば……」 「ひぃあ! 北見先輩の口から生二酸化炭素が! 同じ酸素を吸っているだけで僕の身体の中心部はパーリナイ」 「……ぱ……」 「なっ!? 間抜け面すら間抜けじゃない……だと……!? 神が創り出した最高傑作、それが北見稜って感じですねー!」 「神?」 「いやあっ! そんなイケメンフェイスで僕を見つめないでくだひゃいっ……! 北見先輩のお嫁さんは橙里先輩だけでいいのに! リアル一夫多妻制は受けつけないので。僕、こう見えて純情ものが好きなんですよねー」 「……」  さっきからなにを言っているのか全くわからないんだが。 「やっぱりアッー! しちゃう時って甘やかすんですか? 僕的には言葉攻めして橙里先輩を溶かしてほしいんですけど、愛のないセックスってだめだと思うんです」 「おい待て、なんでセックスの話になった?」 「道具とか拘束とか複数プレイとかもいいとは思うんですけどー、そこには萌えの真髄はないと思ってて。互いに愛し合ってあはんするからこそエロさが際立つじゃないですか!」 「……いやだから止まれって」 「いいんですよ? 乱暴なのもいいと思いますけどー、お二人には美男美女だからこそ普通のセックスをしてほしいっていうか。やっぱりー、平凡受けも平凡顔がとろっとろになってそれにバキュン! されちゃう攻めの心情に共感するのも一個の楽しみ方ですけど、どっちも顔が整ってるからこそ男同士の絡みがよりふつくしく見えません?」 「なあ、おまえの耳機能してる?」 「橙里先輩って綺麗な顔しておいて気ぃ強そうだから汚してみたいですよねー、わかります。でも、段々優しいのから乱暴にしたら橙里先輩きっとめっちゃかわいい顔しますよ、これ腐男子の勘。『えっ、最初あんなに優しかったのになんでこんなにっ、酷くするの……? ああっ、でもすっごい気持ちいい……! もっと酷くしてほしいぃ!』ってなるに違いな」 「と、ま、れ」  訳分からんことを口走りまくる男の顔を片手で挟むと、何故か急に黙った。  やっとこれで静かに…… 「ふにぃぃぃい! それは橙里先輩にやってくださいぃぃ! ああっ、北見先輩のお美しいどエロなおててが僕の皮膚で汚れてしまったああああ僕はなんてことを! 傍観者に徹するべき腐男子として失格だああああ!」 「うるせえ!」

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