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嵐の前の静けさ 8

「な、なぁ。まだ怒っとる…よな?」 「ほんとに信じられない。」 「うわぁっ、ごめんってぇ〜。」 広彰は俺の背中に顔を埋めながら唸った。今、広彰に後ろから抱き締められる形で俺たちは布団に包まっている。 俺の平手で完全に酔いが醒めたらしい広彰は、あれからオロオロしながらも俺を風呂場に運んで丁寧に洗ってくれた。次に、素早いスピードでベッドのシーツを取り替え、俺を布団の中に寝かせて。それから、まだ臭いが充満しているからと窓を開け今も換気をしている。 正月明けの夜風は寒い。ベッドに入らず、床に正座している広彰の腕を無言で引いて。そして、今に至るのだ。 正直、嬉しさもあった。こんな事されるのは俺だけだと思ったから。でも、その気持ちを認めたくないのと、本当に俺が漏らしたみたいになって恥ずかしくなったという理由から、俺はツンとした態度をとる。そうすれば逞しくて大きな体を小さくさせ謝る姿が、少し可笑しくて。 「ん…。仕方ないから許してあげる。」 「えっ、まじで!?」 「なに、不服?」 「そんな訳ない!良かったぁ、ほんまに嫌われたか思ったわ…。」 「もう絶対しません。」そう言ってまた俺の背中に頭をグリグリと押し付けてくる。そんな広彰を身をよじって制し、俺は体の向きを変えた。広彰と向かい合わせになる。 「……?」 「嫌いになるわけないじゃん…。それに、」 広彰の頬を両手で包んで。ちゅ、と唇を重ねた。 「……広彰になら、何されても…いいよ。」

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