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青天の霹靂 1

「では本日の講義はここまでです。来週は後期試験前最後の講義なので出来るだけ出席するように。」 教授のその言葉を皮切りに、生徒たちは一斉に帰る準備やら私語やらを始める。考え事をしていたらいつの間にやら講義が終わってしまっていたようだ。 「はぁ…。」 結局あれから広彰とは会っていない。大学は同じでも学部の違う俺たちは会う約束をしなければ、元々そんなに顔を合わせることがないと言うのもあるのだが、実際のところ俺は広彰を避けていた。教室の前で待っている広彰から逃げるように家に帰った事もあったし、家のインターホンが鳴っても居留守を使った事もあった。 会いたくないわけじゃない。寧ろ会いたいけれど…。つまるところ、気まずいのだ。 「タスクどうしたん、ため息ついて。辛気臭いで。」 「倫太…。…ちょっと疲れただけ。」 「まだ月曜日やで?あー、でも月曜やからしんどいよなー。」 俺の隣で講義を受けていた木屋倫太(きやりんた)は、俺と同じように机に顔を突っ伏してそう言った。 「で、広彰と何かあった?」 「…ッ!は!?」 いきなり出てきたその名前。勢いよく顔を上げ倫太の方を見ると、倫太は一瞬驚いた顔をしてそれからケラケラと笑い始めた。 「分かりやすすぎやろその反応。こっちがびっくりしたわ。」 「ど、どうして広彰…?」 「いやぁ、最近たすくから広彰の匂いせんから…?」 「……え?」 「それもやけど、まあ当の本人広彰から、相談受けましてぇ〜。」 「まって、俺から広彰の匂いするの…?」 「そこ…?」 カァ、と自分の頬が熱くなっているのが分かる。倫太はもしかして俺と広彰の身体の関係も勘付いているのだろうか…。 ……倫太とも寝た事あるし…。 「広彰の匂いというか、たすく煙草吸わんやん。やけど煙草の匂いする時あるから。」 「ぁ、そっか…。」 「そうそう。んでな、詳しい事聞いてないけどさ、広彰がタスクに嫌われたかもってウジウジうるさいねん。」 「そ、そんな…嫌うわけない…。」 「うん。そう言うやろ思った。まぁ、俺は首突っ込まんけど、兎に角、広彰そんなんやから構ったってくださいって話!じゃあまた明日な。」 「あっ、ちょっと…!」 もう片付けを済ましていた倫太は、俺の呼び止めも虚しくさっさと講義室を出て行ってしまった。

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