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青天の霹靂 10 ※
それから少しして、バタバタと足音が聞こえてきて。勢いよくカーテンが開き、気付けば大きな体に強く抱きしめられていた。
「タスク!」
「…ひろ、あきっ…。」
懐かしい声、懐かしい体温。
「無事で良かった…。」
涙声でそう言う広彰。その言葉に俺の心はまた暗い影を落として。
「…でも、こんな姿になっちゃった…。見て、おれ、足がなくなっちゃったんだ。こんなの…生き地獄だ…。」
「っ……。」
ははっ、と渇いた声が漏れる。
「………生きてりゃなんとかなる。ほんまに生きてて良かった…。」
ズキ…。
胸が痛い。大好きな体温に包まれているのに…、心は冷んやりとしていた。
「広彰も…あの医者と同じ事を言うんだね。」
「…たすく?」
広彰の腕を引っ張って、向かい合わせになるようにベッドに座らせる。
「こんな姿でも本当に生きてて良かったと思う?」
「なに、お前…どうし、」
「ねぇ、抱いてよ。」
「…え?」
「今すぐ、ここで抱いてって言ってるの。」
胸ぐらを引き寄せて、触れるだけのキスをすれば。広彰は顔を少し強張らせる。ほらね…。
「い、いや…あかんやろ…。こんな時に…。と言うか、タスク安静にしとかな…、こんな…」
「こんな足のない俺じゃ無理なんでしょ?」
「ちがっ…。」
「醜(みにく)い姿の俺は抱けない?」
包帯が巻かれた部分を、広彰の手を掴んで触らせる。彼の手は震えていた。
「急な事でちょっと動揺しとんやろ…?それでこんな…、自暴自棄な、」
「違うよ。ほら見て、広彰に触(ふ)れられただけで勃ってるの。欲情してるんだ。」
「………。」
「ねぇ、お願い。それとも俺の事嫌になった?……ンンッ、、ぁ……んっ…。」
後頭部を引き寄せられて唇が合わさった。すかさず舌が入ってきて、ぬめぬめとお互いの舌を擦り合う。
「ンッ…。」
同時に俺の昂(たかぶ)りを、ごつごつとした手に擦られ、俺は呆気なくイってしまった。そして、そのまま出された精液を後ろに塗りたくられる。クチュ…と丁寧に窪みを撫でられもう我慢できない。
長い間塞がれていた口が離れてお互いの唇から銀の糸が引く。それがポタリと落ちたのを見て、それから広彰の目を見ようとして…。すぐにまた抱きしめられたから、それは叶わなかった。
「…俺は、お前の苦しみ分かってやりたい。」
「……。」
「できる事ならお前と代わってやりたい。でも、俺はタスクにはなれへん…。」
ゆっくりと彼のモノが俺のナカを拓いてゆく。
「……ぁ、ぁン…。」
「ごめんな。」
*
「ん、ん…ぅ、ァァ…。」
いつもよりゆっくりな律動。突かれる度に何故か涙が出て、広彰はごめんと謝罪を繰り返す。
どうして広彰が謝るの。
「ひろあき…っ…。」
「俺、何も出来んかったッ!お前の事守ってやれんかった…。」
「……ァア!…ぁっ、ぁンッ!」
「でも、ほんまに…たすく…。お前が生きてて良かったっ…って、おれは思う…っ…。」
「は………っ、ぁ……。」
「あの医者の事も…分かってやって欲しい…。」
ひと際奥を拓かれた瞬間、温かいモノがじゅわりと広がった。
*
「広彰、ごめん、1人にさせて。……気持ちの整理したいから…、ごめん…。」
俺よりも辛そうにする広彰の背中を見送って、俺はまた1人静かに涙を流したのだった。
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