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途端の苦しみ 1
「気分はどう?」
「最悪。」
あれから2晩ほど経った。何も考えたくなくて、寝ようと思っても鈍痛で目が覚める。その度に現実が突きつけられた。辛いのはそれだけじゃない。何度か行われる消毒がまさに地獄だった。
「今日も担当の瀬波(せなみ)です。宜しく。じゃあ早速消毒しようか。」
その言葉が合図となり、看護師たちが俺を押さえつける。俺は恐怖で震え上がった。
その様子を見て、白衣の男…、瀬波は俺の瞼を閉じるように手を乗せてくる。
「目瞑ってて。」
顔が近くにくる気配がして、それから優しい声が脳に響いた。
「いいかい。俺を広彰君だと思って。」
「なっ…ん、で…!」
「いいから。」
「っ………。」
「怖くない。大丈夫。…一緒に頑張ろうな。」
不思議とその声に体の力が抜けた。目を覆っていた手が今度は俺の手をしっかりと握る。
「ぃ゛っ……ぁ゛ぁ゛…。」
消毒液が傷に染みる。そこに心臓があるかのように、ズクンズクンと脈打つ。
「ぁ゛ァ゛ァ゛ッ!」
意識が飛びそうな程の激痛に耐えられなくなりそうになる度に、「頑張れ、大丈夫」と言葉が響いた。
*
処置を終えてまた1人になる。
さっきは何故かいつもより耐える事が出来た。けれど、1人になると嫌な方に考えがいってしまう。
あの激痛はいつまで続くのだろうか。痛みがなくなったとしても、もう今までのように生活は出来ない。1人でベッドを降りる事も出来なければ、自力で用を足す事さえ出来ない。
「…ぅ……っく…。」
仰向けのまま少しだけある足を動かそうとしても、ぴくりとも動かなくて。それは何度やっても同じ。
悔しい。
「くそっ……。」
つくった拳をベッドに叩きつけてもどうにもならない。
……ただ、絶望感に苛(さいな)まれるだけだった。
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