23 / 30
途端の苦しみ 2
悲劇はこれで終わりじゃなかった。
その日の夕方の事だった。
電気の点かない病室はどんよりと薄暗い。一点だけを見つめぼうとしていると、ゆっくりとカーテンが開いた。
「倫太…。……っ、どうしたの…?」
うつむいたままの倫太。表情がよく伺えないが、その雰囲気にただならぬものを感じる。
「……………って、」
「な、なに…。」
ぼそり、と発された言葉は聞き取れない。聞き返すと、倫太は勢いよく顔を上げて。青ざめた表情と目が合った。
「“お前は”絶対生きろって…。」
ぽつりと呟かれた言葉。
「…どう言う、こと、」
声が震える。全身から体温がなくなっていくような感覚がして。
「広彰が、お前は絶対生きて幸せになれって…!」
「ひ、ひろあきは…?」
「あいつはッ…、」
「や、やだっ…、聞きたくない…!」
怖い。
やめて。
「あいつは…、死んだ…。」
しん…、と部屋が静まり返る。
何言ってるの…?
「う、嘘だ…。」
「子どもの救助作業中に火事なって、真っ先に火の中飛び込んでった…。子ども助けて戻ってったのにっ…、生きとったのに…!その後に急に具合悪なって、一酸化炭素中毒でっ…。」
「どうしてそんな事言うの…?」
「たすく…」
「信じない!!」
「たすく」
「広彰が死ぬわけない!!」
「佑!」
「出てけ…倫太なんかキライだ…。」
ともだちにシェアしよう!