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途端の苦しみ 4
夕焼け空を埋め尽くす灰色の煙。
倒壊した家。
コンクリートで出来た建物が所々に辛うじて建っているだけで、ほとんどの家が崩れ、焼け…。そのせいで、遠くの方まで見渡せてしまう。
辺り一面まるで…………、戦場のようだった。
地震発生当日、自分はボロアパートの下敷きになり、次に目が覚めた時には病室だったから分からなかったこの景色。
この病院の駐車場は避難してきた大勢の人で溢れかえっていて。皆、簡易的な毛布にくるまり寒さに耐えていた。中には怪我をしている人もいるようで呻き声も聞こえる。
ここまで、広く、多くの人に被害が及んでいるとは……。
俺は、茫然と見ている事しか出来なかった。
「お前んとこどうやった?」
ふと、声が聞こえてきた方を見ると、男の人が2人暗い面持ちで立っていた。服もボロボロで、顔には煤(すす)が付いている。
呼び掛けられた男の人は、弱く頭を横に振っている。
「そっちもか…。」
「どんくらい被害出とるんやろか…。情報が全く入らんからさっぱりや。」
「………さっきな、センター街から避難してった奴おった。あっちも相当酷いらしい…。」
「うそ、やろ…?あのセンター街が…?」
「ああ…。」
「あそこは、新しい建物ばっかりやんけ…。それに、1番栄えとるし…、俺らの街のシンボルみたいなもんやのに…っ!」
「………人も家も、物も…。俺らの思い出も、誇りも…!!ぜんぶ、全部…焼けた。無くなってもた…。」
「俺らの街は……もう終わりや……。」
最後の言葉がやけに響く。
俺は持っていた柵をぐっと握りしめた。
すると、今度はすぐ下の方から泣き声が聞こえてきて、目線を下にうつす。
「ひっ……。」
駐車場の隅、白い布に包まれた‘何か’が、等間隔に並んでいて。そこに寄り添う人たち。
「おかあさん!返事して…!目開けてよぉぉ……。」
「親父……、熱かったよな、痛かったやろ……苦しッかったやろっ…?ごめん……、ごめん……。」
いくら呼びかけても、それらが…布に包まれた人たちが、動くことはなかった。
よく見ると、少し離れた箇所にも同じように遺体が並べられていて。それは数え切れない程だった。
亡くなった人達を目の前にして思う。
俺は…
「おれ、はっ…」
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