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身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ 1
「もう、こんなん地獄や…。」
ふと、横からそんな声が聞こえてきて。いつから居たのか、俺と同じように目の前に広がる光景を見ていたその人の表情は全てを諦めてしまったかのように目に光を宿していなかった。
「死んだ方がマシや…。」
その言葉にぞくりとした。
そして、あっという間に柵を乗り越えようとして。
落ちてしまう。
そう思ったけど、
「おいっお前!何しとんねん!」
怒声と共に、走ってきた男の人に体ごと引っ張り戻されて、2人は尻餅をついてこちら側に転んだ。
「死なせて…。」
小さな声が俺にも、止めに入った男の人にもはっきりと聞こえた。
「何言うてんねん!生きてりゃ何とかなるやないか!死んでいった仲間たちの分まで、俺らが生きるんやッ!絶対に立ち上がったんねん…負けてたまるか…。」
苦しそうに叫んだその言葉に、飛び降りようとした人は泣き崩れた。
「…っおれ、っ馬鹿なことを…。ぅぅ…っ…。」
自分を見ているみたいで。
俺は無意識のうちに、目の前の人に重ね合わせていた。
足が無いのに生きるのなら死んだ方がマシだと思った自分を。
だからこそ男の人の言葉がよく心に刺さった。
そして、思い出すのは大好きな彼。
“生きてりゃ何とかなる”
“たすくが生きててホンマに良かった”
“広彰が、お前は絶対生きて幸せになれって…!”
ボロボロと涙が出てきて止まらなかった。
「ひろあき…っ、ごめんなさい…ごめん、なさい…ッ」
最後に会ったあの日。最悪の態度を取ってしまった。広彰の悲しそうな表情を鮮明に覚えている。
ごめんなさい。と、どれだけ謝っても故人にそれが届く事はもうない。
彼に償える事があるとするならば、それは、この命を広彰の分まで生きる事。
ただそれだけだ。
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