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第2話

 奥さんが淹れてくれたほのかな甘みのある煎茶に、住吉はふぅと息を吹きかけた。  ローテーブルの上には熱いお茶と、酔い醒ましのペットボトルの水とグラス、そしてお茶請けの甘味が添えられていた。  座り心地抜群のソファで、しかし住吉はそわそわとしてしまう。  ラグの上に膝立ちになった奥さんが斜め横に居て……彼が動く度に大きく開いた襟ぐりから胸がちらちら見えるからだ。 「あ、あの」 「はい?」 「床ではなくて、ソファに座られたらどうですか?」 「え?」  奥さんが小首を傾げると、長めの前髪がさらりと流れ、そのしっとりとした色香が際立つ。  切れ長の目元がうっすらと赤く、なんだか言い知れぬ熱を孕んでいるようで……住吉は落ち着かない気分だった。 「奥さんを床に座らせてたら、落ち着かないので……すいません!」  住吉が頭を下げてそう言うと、奥さんがくすりと笑った。 「いいえ、こちらこそ、気が付かずにすみません」  そう言いながら、奥さんが緩慢な動作で立ち上がり、住吉の隣の空いているスペースに腰を下ろして……なぜだかヒクンと肩を動かした。   「?」  住吉は横目で奥さんの様子を伺った。  潤んだような目と、うっすらと開いた唇……。  なんだろう。妙に色気がある。  しかも奥さんからはいい匂いが漂ってきて……。  住吉はごくりと喉を鳴らしてしまった。 「お、奥さんも、水、飲まれますか?」  どもりながらそう問いかけて、住吉はペットボトルに手を伸ばそうとする。 「あ、自分でしますから」  奥さんが慌てたように、前傾になり……。 「あっ」  と、吐息のような上擦った声をあげた。    住吉が目を丸くして奥さんを見ると、奥さんは片手で口を押えていた。  ヒクン、とまた肩が跳ねる。  オーバーサイズのTシャツはゆったりと彼の体を覆っていたが、先ほど目にした胸の先のふくらんだ粒を思い出され、住吉は透視でもするようにマジマジと奥さんを観察した。  紅潮した頬はいよいよ赤く、伏せられた睫毛すらも艶めいている。  住吉はふと、ブーン、となにかが震える音がしていることに気付いた。 「奥さん、携帯鳴ってるんじゃないですか?」  住吉が問うと、奥さんが口元を押さえたままでハッと目を見開き、こちらを向く。 「俺、バイブにしてないんで、多分奥さんの携帯ですよ。どうぞ、出てください」 「い、いえ……」  奥さんがゆるく首を振った。 「……携帯は、いま、持ってないので……」 「え? でもほら、鳴ってますって。奥さんの、尻ポケットとかに入ってませんか?」  振動音は奥さんの腰の辺りから聞こえてくるような気がして、住吉はそう言った。  奥さんは……。  奥さんは、真っ赤になって、潤んだ両目を忙しなく瞬かせている。  まさか、と住吉は思った。  まさかこの、ブーンという唸りは……携帯ではなくて……。 「奥さん、立ってください」 「え……?」 「ポケットに携帯がないか、探してあげます」  住吉の言葉に、奥さんが悩まし気に眉を寄せて……。  ゆっくりと、立ち上がった。    奥さんの下腹部で振動音が鳴っているのは、もう疑いようがなかった。  住吉の見ている前で、奥さんはだぼっとしたTシャツの裾を持ち上げ、それを口に咥えると、履いていたチノパンの前を開き始めた。  迷いながらも動くその指を目で追いながら、住吉は生唾を飲み込む。  ジー、とファスナーが引き下げられた。  奥さんの股間の膨らみが、徐々に露わになってゆく。    ズボンにふわりと被さっているTシャツのせいで、まったく気付かなかった。  奥さんがまさか、勃起していたなんて……。  太腿までズボンをずり下げた奥さんが、羞恥をこらえるようにそっと、住吉を窺ってくる。    奥さんは、黒い紐パンを履いていた。  腸骨の下辺りに食い込んでいる蝶々結びになったその黒と、奥さんの肌の白さのコントラストが淫靡であった。  その紐パンの、股間を覆い隠している前の部分の脇から、ピンク色のリモコンが見えている。  長方形のそこからはコードが続き、それは奥さんの後ろへと繋がっていた。    ブーン、という音は、その後ろの……秘部から聞こえてくるのだった。 「へぇ……」  上擦った感嘆の声が、住吉の喉から漏れた。 「随分といやらしい恰好してたんですね、奥さん」  住吉の言葉に、奥さんがぶるりと内腿を震わせた。   「奥さん、後ろを向いてください」 「そ、そんな……」 「言ったでしょう? 携帯がないか、探してあげるって。奥さんの後ろから、バイブ音が聞こえてますよ」 「ああ……」  Tシャツを咥えたままのこもった音で、奥さんが吐息を漏らした。    そして、ソファに座る住吉の前で、奥さんがくるりと体の向きを変える。  奥さんのお尻はTシャツの裾が覆い隠していて、見えなかった。 「そのテーブルに手をついてください」  住吉が促すと、奥さんがまた震える吐息をこぼして、おずおずと上体を屈めた。  ローテーブルに両手をついて、腰を後ろに突き出すような格好になる。  住吉は手を伸ばして、彼のTシャツをばさりと背中までまくりあげた。  白くむっちりとした尻たぶの狭間に、食い込むようにしてTバック部分の紐が這っていた。  そして、ピンクのコードが、奥へと続いている。  住吉は、双丘に手をかけて、それを左右にむにゅっと開いた。 「ああっ?」  狼狽えたような奥さんの悲鳴があがる。  ぬらぬらと濡れた奥さんの孔が、露わになった。    そのすぼまりをさらによく見ようと、住吉はTバックの紐を指に引っ掛け、右側へと寄せた。  濃くいやらしい色をした襞が、ひくひくと動いている。    住吉は、ピンク色のコードを手前へゆっくりと引いた。      「ひっ……」  奥さんの背中が、ビクリと震え……。  後孔からは、ブーンと唸り声を上げているローターが。  ぬちゅりと顔を覗かせたのだった。      

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