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4LDK南向きオートロック公園隣接駅至近商店街まで徒歩8分(2)*
優ちゃんの腕に抱き込まれ、オレは優ちゃんという世界一安らげるソファへ身をけた。
「ようこそ、慈雨」
とっておきの甘いバリトンがオレの耳から腰まで痺れ薬のように流れる。大きな手はオレの腹から内股を滑って膝を捉え、両膝をそれぞれ優ちゃんの膝に掛けさせられて、そのまま大きく開かされた。優ちゃんは背後にいて、誰に見せている訳でもないけれど、それでも秘所を晒すのは恥ずかしく思わず顔を背けて目を閉じてしまう。
「耳も首も真っ赤になってる。もうのぼせたのか?」
くすくす笑う声がまたオレの身体を内側からくすぐり、力が抜けて動けなくなっている首に優ちゃんの唇が這う。唇の間からは舌の先が出ていて、ぬめる感触に意識が集中して目を閉じた。同時に水面の下では大きな手がオレの身体をまさぐっていて、太股も脇腹も際どいところを触るくせに胸だけは触ってくれない。
「ん、優ちゃん……」
思わずねだって胸を突き出し、それでも無視されて、オレは優ちゃんの手を強く握らないように気をつけながら、そっと自分の胸に導いた。
「触って……」
「ピアニストの指にそんなおねだりをするなんて度胸あるな、お前」
優ちゃんはいつもの決まり文句で俺をからかい、オレもいつもの決まり文句でおねだりをする。
「だって……。オレを気持ちよくしてくれるのは優ちゃんだけなんだもん」
「それはそうだな。アシュケナージなんかに指一本触れさせてたまるか」
まだ根に持ってたのか。
ちょっと笑ってしまったら、優ちゃんも一緒に笑うくせに、オレの顎に指を掛けて振り向かせ、キスを繰り返しながらわざとたしなめるような声を出す。
「ピアノなんかより俺に集中しろ」
その言葉の直後に再び唇は重なり、予定調和で舌が忍び込んでくる。口の中いっぱいに二人分の舌がぬるぬると絡みあい、快楽と唾液を一緒に飲み込んだ。
舌の動きに気を取られているうちに優ちゃんの手は胸に近づき、不意に柔らかな指の腹で捏ねられる。
「んっ!」
下腹部まで響く刺激に震え、その気持ちよさをもっと味わいたくて、優ちゃんの首の後ろへ手を回す。
優ちゃんは右手でしっかりオレの腰を抱き、左手を胸に滑らせ、ぷつりと硬くなったところを指先でつまんで揺らした。
「あんっ! 優ちゃんっ」
「もっとそういう声を出してくれ」
首に、鎖骨に、優ちゃんの舌と唇が這うのを感じながら、指先で引っ掻くように胸の粒を刺激されて、オレは背筋を反らし、ビクビクと腰をはね上げた。
優ちゃんに与えられる刺激だけで身体の中か満たされ、オレはたまらなくなって自分の硬い興奮に手を伸ばそうとした。
「あ、こら。ダメ」
手を払われて、オレは焦れて腰を振った。そうでもしなければ甘い疼きのやり場がない。
「もっと苦しんでから。ほら、しっかり寄り掛かって俺の首に両手を掛けて」
オレは優ちゃんに言われるまま、優ちゃんの胸に寄り掛かり、両手を優ちゃんの首の後ろへまわす。
「いい子だ」
優ちゃんはオレの膝を掛けさせたまま、両脚を浴槽の幅いっぱいに開き、両手でオレの胸の粒を左右同時につまんだ。
「あーっ!!!」
「いきそうか、慈雨? こんなに硬くペニスを勃たせて。全部見えてるぞ。先が赤くなって顔を出してる。いやらしい奴だな」
意地悪を言いながら吐く熱い息がオレの耳をくすぐる。
「慈雨、乳首だけでいけ」
「やっ、無理っ」
「ダメ。いくまで許さない」
両方の粒をくりくりとねじられ、表面を擦られて、でも達するにはエネルギーが少したりない。
どこからでもいい、とにかく刺激を。恥ずかしい場所に摩擦が欲しい。
静かなお湯に向けて腰を振ったって、全然たりない。ただ恥ずかしくていやらしくて情けないオスの姿が優ちゃんの目を楽しませるだけだ。
「ん、あんっ! いきたい。いきたいよぉ、優ちゃん」
オレは優ちゃんの下腹部にぎゅっとお尻をくっつけた。息が止まりそうなほど硬く大きくなったものが食い込んでくる。
「優ちゃん、くりくりするだけじゃイヤ!」
両脚を開かされて動きにくい姿勢のまま、乳首を弄ばれてその気持ちよさに泣きそうになりながら、オレは一生懸命お尻を振って、優ちゃんの興奮を刺激した。
「お前の欲望に素直な姿はとてもいい。躾けた甲斐があった」
優ちゃんも軽く腰を振って応えてくれたけど、それ以上の予定はないらしく、オレは左右に広げていた膝を外され、優ちゃんの脚の間でくるんと反対向きに座らされた。
一緒に男らしいところを触りっこして気持ちよくなろうってことかなと期待したけど、優ちゃんは嗤う。
「乳首だけでいってからな」
オレは膝立ちを促され、優ちゃんの口の高さに自分の胸の粒を晒した。
「右? 左?」
「ひ、左……」
答えた瞬間に勢いよく優ちゃんにむしゃぶりつかれ、硬く尖らせた舌先でぐるぐると舐められた。
「んあっ!」
素早く舌先が上下に動き、指よりもっと気持ちいい。ますます身体の中にはどろどろした熱い快楽が渦巻いて、あと少しの刺激を渇望した。
「お……願い……」
優ちゃんはオレの腰を抱き締め、オレは強制的に快楽を味わわされて苦しかったけど、同時に剥き出しの欲望が優ちゃんの腹に触れている事に気づいた。
「あっ、もう。優ちゃん……」
オレは優ちゃんの腹に自分を押しつけ、小さく腰を揺らして快感を増幅させた。
優ちゃんに乳首を舐めてもらいながら、オレは優ちゃんの腹を使って自慰をして、ようやく苦しみが頂点に達した。
「ああっ、いくっ!!!!!」
お湯の中で優ちゃんに向かってぶちまけて、崖のふちから飛び出すような絶頂感に包まれた。止まらない放出に身体を震わせ、腰を貫いた快感にぼんやりとして、再び優ちゃんの目を見るまで、オレはずっと優ちゃんに抱っこしてもらっていた。幸せだ。
「さて、前菜はここまで。メインディッシュを食いに行こう」
優ちゃんは浴槽の栓を抜いて立ちあがると、二人の身体をシャワーで流し、日向の匂いがするタオルで髪から爪先まで全部拭いてくれてから、オレの手を掴んで寝室に向かって歩き始めた。
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