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4LDK南向きオートロック公園隣接駅至近商店街まで徒歩8分(3)*
寝室はダブルベッドを二台くっつけて置いてある。手前側がオレのベッドだけど、このベッドに優ちゃんが寝たら、それは「まだお前を寝かせないぞ」という合図だ。
優ちゃんはオレのベッドに寝て、オレに向かって両手を広げた。
「慈雨、抱っこ」
オレは頷き、するりとその腕の中に収まる。
優ちゃんは、オレのくせっ毛を人差し指に巻きつけて、とても大袈裟に溜め息をついた。
「こんなにも愛おしくて優しく大切に接したい感情と、組み伏せて己の欲望を突き立てたい衝動が、一人の人間に対して同時に湧き上がるなんて、愛とは不条理なものだ!」
オレは優ちゃんを安心させる笑顔を作り、シャープな頬にキスをした。
「だいじょぶ。優ちゃんのどんな『愛してる』も全部オレが独り占めしてるだけ」
優ちゃんは懐いた仔犬のようにオレの頬へキスを返した。
「もちろん、俺の愛はアガペーもフィリアもエロスも全部お前に捧げる」
優ちゃんは自分の脚の間にオレの片脚を絡め取り、下腹部の硬い興奮をオレの太腿に押しつけながら、オレの乳首をきゅっとつまんだ。
「ああんっ!」
「せめて、存分に快楽を味わってくれ」
優ちゃんはオレを仰向けに寝かせると、「愛してる」と言いながら同じ数だけ顔中にキスをしてくれた。
同時に胸の粒をつまんでねじられて、そのピリピリと甘く痺れるような快楽はストレートに下腹部まで伝わる。
「んっ。ん、ん……っ」
優ちゃんの大切な耳の近くで大きな声が出ないよう、声を噛み殺しながらオレは身体を震わせた。
優ちゃんの唇が、声を我慢しているオレの唇に触れる。
唇の力を抜いてふわふわのキスをして、すぐに優ちゃんの舌が入り込んできた。慣れた滑らかな感触にうっとりする。舌先で舌の表面をくすぐられ、くるりと絡め取られて甘噛みされ、そのままするんと優ちゃんの口の中へ吸われて、舌の根元がぴりりと痛む。
全てが快感として自分の身体に蓄積されて、体温が上がっていくのがわかる。
優ちゃんの息が顔に掛かり、ふわふわと温かい。
同時にまた胸を触られ、オレの声は優ちゃんに吸われる。
「んんっ!」
オレの身体が逃げないように、しっかりと快感を味わって楽しめるように、力強い腕で抱き締められながら、乳首を翻弄されていく。
むずむずする。びりびりする。静電気で全身が総毛立つような快感。体温の高い優ちゃんの肌が全身に直接触れて、しかも少し我慢できなくて優ちゃんの腰はオレの腰に擦りつけられて、
「ああ、慈雨」
そう呟く切なさも、僅かな快感で己を癒そうとする愚かな律動も全部が愛しい。
愛しいと思ったら、表面的な快感だけじゃ満足できなくなってきた。
「来て、優ちゃん」
優ちゃんは黙って頷き、もう一度オレのことをしっかり抱き締めてから、サイドテーブルへ手を伸ばした。
オレの身体は仰向けに開かれ、優ちゃんの手で腰の下にクッションが押し込まれる。
素直に自分の両膝を抱えて左右に開いて待っていると、甘いイチゴの香りのするローションが優ちゃんの指の上に垂らされ、そのまま窄まりに塗りつけられた。
「んっ!」
「悪い。冷たかったか?」
眉根を寄せて、オレより苦しそうな顔をする。
「だいじょぶ」
もう慣れた行為なのに、優ちゃんは今でも、オレの身体を自分の欲で押し開くことに、小さな罪悪感を抱えている。そんな苦しさより、受け入れたくなる愛おしさのほうが大きいんだけどな。馬鹿な優ちゃん。
優しくそっと円を描くように撫でられ、柔らかな指先がほんの少し埋められる。
「ん……」
オレの表情を注意深く観察しながら、優ちゃんの指が窄まりをぐるりと撫で回す。
筋肉の輪をくすぐられ、オレの腰は震えた。
「ああっ」
「今日は解れるのが早い。中指も入れてみよう」
本来なら閉じている場所を押し広げられ、そのまま自分の意思では閉じられない焦りが本能的に生じる。オレはゆっくり深呼吸し、緊張を緩めた。
「ほら、慈雨。わかるか?」
優ちゃんの声が上擦り、少し呼吸が荒くなった。わかる。優ちゃんの指がオレの窄まりと内壁をゆるゆると摩擦した。
「お前の好きなところ。俺も好きなところだ……」
揃えた二本の指が抜き差しされる。その速度は次第に早くなり、優ちゃんの呼吸は荒くなり、オレは切ないような心地よさに追い上げられて声を上げる。
「ああ、ああっ」
「ほら、見つけた。ここだ」
「あっ! あああああっ!」
優ちゃんが内壁の膨らみを押して、オレは気づいたときにはもう快感に堕ちていた。
「はあっ、ああ。優ちゃん……」
チカチカする視界の向こうで、優ちゃんは舌先でくるりと自分の唇を舐めて嗤っていた。
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