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第2話
教室に入った俺は、空いている席を探しながら辺りを見回す。
当然と言えば当然なことだったけれど、生徒達は皆男子生徒ばかりで俺の心は踊りに踊っていた。
この中の何組が付き合う事になるんだろうか?
なんて、わくわくしながら空いている席を見つけると椅子に腰を下ろしてもう一度辺りを見回す。
あの二人は仲良さげだな、前にいるほうが攻めで後ろが受けといったところか。
いや、ここは王道外しで後ろが攻めでも美味しいな。
あっちの二人は、幼馴染で二人とも片思いしてると思いあって中々一歩前に踏みだせないでいるなんて展開だったら美味しいな。
なんて勝手に想像して楽しむのは腐男子の性であるから仕方ない。
これからは、こんな妄想がいつでもどこでもできるというだけでも嬉しいのだけれど、やっぱり見たいのは本物のBLだからな。
とりあえず、今日は簡単なHRとこれからの学校生活の説明だけだったはずだから、校内探検しつつ生BL探しだな。
などと考えていると、前の席に座っていた生徒が俺の方を振り返って声をかけてきた。
「なぁなぁ、お前見ない顔だよな。もしかして、高校から入ってきたやつか?」
気さくに話しかけてくる男子生徒は、なかなかのイケメンだった。
イケメン発見。
雰囲気からして、これはわんこ系イケメンだな。
わんこ受けと見せかけてわんこ攻めも美味しいリバタイプだ。
思わずまじまじと観察してしまい、怪訝そうに首を傾げられてしまう。
「うん?どうかしたか?そんなにじっと見て」
「あ、悪い。えっと、そうなんだ。中学までは別の学校にいて高校から入試で入った」
「やっぱりか。道理で見たことない顔だなと思った」
そう、ここ陸上学園は小学校から大学までのエスカレーター式の学校で、だいたいは中学校から上がってきた生徒が多いんだ。
俺のように途中から入ってくる生徒は珍しいらしい。
「じゃあ、えっと…?」
「あ、俺。榊 隆一 って言うんだ。宜しくな!」
「榊か。俺は、高松 悠斗。宜しく」
「悠斗な。俺の事も隆一でいいから、遠慮せずに呼んでくれよな」
そう言って人懐こい笑顔を浮かべる姿を見ると、すごくいいやつなんだろうなと思えた。
「じゃあ、隆一」
「おう」
「隆一もエスカレーター組なのか?」
「そうだぜ。小学校の頃からずっと男子校なんだよな。悠斗は共学だったのか?」
「ああ、中学までは共学だった」
「いいなぁ、女の子とか沢山いたんだろ?羨ましいぜ」
いや、俺からしたら小学校からずっと男子だけだったお前の方が羨ましい。
と、喉まで出かかった言葉を何とか飲み込み曖昧な笑みで誤魔化す。
「なぁ、共学って事は、悠斗にも彼女とかいたんだろ?」
「え?いや、いないが」
「まじで?そんなモテそうな容姿してんのに?」
モテそうな容姿、とは?
驚く隆一に俺は不思議に思って首を傾げる。
イケメンでモテそうなのは隆一の方であって、決して俺の方ではない。
その証拠に今まで一度も告白されたことがなければ、バレンタインにチョコをもらったことも母親から以外はない。
まぁ、別段それが寂しいと思ったこともなかったけれど。
彼女が欲しいと思うよりも脳内で付き合わせている二人が本当に付き合わないかという思いの方が断然強かったから。
「俺は全くモテないぞ?平凡な容姿だからな」
「まじでか」
「ああ」
俺が頷くのと同時に扉が開き、担任の教師が入って来ると隆一は慌てて前を向いた。
その後ろから俺は教壇の前に立つ担任の教師の姿を観察する。
これはまたかなりのイケメンだ。
男性的というよりは中性的な美しさを持ったイケメンである。
ふむ。このタイプは受けかな。
Sっぽい雰囲気は持ってない優しげな感じだし。
いや、でもそう見せかけて裏の顔は鬼畜攻め系でも美味しい。
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