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第6話

「じゃあ、俺はこれで」 「はい。失礼します」 頭を下げる俺にまた微かに笑みを浮かべて超絶美人は歩いていく。 その後姿を見送りながら、俺の心の中は萌えに萌えまくっていた。 あれだよ、あれ! ああいう人達の登場を待ってたんだよ。 あれだけの容姿だ。 密かに恋心を抱いている人間だっているはずだ。 ファンクラブとかできてたりしているに違いない。 あの人達同士で出来上がってる可能性もあり得ないことはない。 ああ、惜しいな。 あの中の誰か一人とでも親しくなっていれば、いろいろ情報も得られるのに。 流石にぶつかっただけじゃ、親しくなるきっかけにはならないか。 いや、これが俺じゃなくて、超絶イケメンだったり、絶世の美少年だったりしたならば、そこから恋が芽生えるというのもあったんだろうけれどな。 残念ながらいたって普通の平凡な俺じゃ、芽生えるものは何もない。 いや、平凡受けや平凡攻めも美味しいんだけれどな。 対象が俺じゃなければの話だ。 まぁ、過ぎたことを言っても仕方がない。 機会はまたあるかもしれないし、とりあえず生BL探しを再開しよう。 そう気を取り直すと俺は再び校内の探索を開始したのだった。 そして、夜。 俺はベッドの上に座りながらずーんっと沈んでいた。 結局、校内隅々まで探したのに生BLは一つも見られなかった。 せめて一組ぐらいは見つかると思っていたのに。 萌えも何もなかったなんて。 まぁ、初日からそう見つかるものでもないのかもしれないな。 萌えには出会えなかったけれど、美味しい逸材には多く出会えただけでもラッキーだったと考えるべきか。 と自分に言い聞かせながら、お気に入りの同人誌を開く。 寮は全員一人部屋なのは幸いだった。 誰に気兼ねすることもなく、思う存分同人誌が読めるから。 生BLが見られなかったうえに同人誌まで見られないなんてことになったら流石に耐えられない。 お気に入りの同人漫画を読んで少しは気分が上昇した俺は、とりあえず今日はこのまま寝てしまおう、とベッドに寝転がる。 明日は一組ぐらいは生BLが見られますように! そう願って、目を閉じ、やがて訪れた睡魔に任せて眠りについた。 翌朝。 昨日早く寝たせいか朝早くに目が覚めた俺は、学校に行く支度を済ませると朝食の準備をする。 寮内には食堂はないから、食事は自分で作るか外に食べに行くかになる。 家事は昔から母親と分担でやっていて料理は俺の担当だったから作るのは嫌いじゃない。 時間もあることだし、昼の弁当の分もおかずを作って、今日は和食の朝食にする。 「うん。我ながら上手くできたな」 出来上がった朝食に満足げな笑みを浮かべると、今日は何かいいことがありそうな気がした。 上機嫌で弁当を詰めて鞄に入れると、少し早めに家を出て学校へと向かう。 まだ早い時間の為か学校へ向かう生徒の姿はまだ数名ほどだった。 「あれ?あれって…」 その中に、俺は昨日出会った人物の姿を見つける。 隆一の幼馴染だって言ってた相羽だ。 俺は人の顔と名前を覚えるのは得意だから間違いない。 昨日はいい態度は向けられなかった気がするけれど、せっかく見かけたんだから挨拶ぐらいはしてもいいだろうと考えて、少し前を歩く相羽の元へと小走りに近づく。 「おはよう、相羽」 「っ…!?」 背後から声をかけると、相羽は驚いたように体を揺らして立ち止まり振り返る。 「朝、早いんだな」 「お前は、昨日の…」 「そう。高松 悠斗。改めて宜しくな」 「…まさか、声をかけてくるとは思わなかった」 「ん?なんで?」 「昨日、いい態度をとってはいなかっただろう?」 ああ、あれは自覚済みだったのか。 納得する俺を一瞥すると、相羽はゆっくりと歩みを進めだす。 それに合わせて隣を歩いても拒絶の言葉は向けられなかったので一緒に行ってもいいものと勝手に解釈した。

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