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第10話
「いや、それはないな」
「なんでだ?」
「あいつ、昔から俺に張り合って来るんだよ。勉強の出来や運動能力。彼女の人数も俺への対抗心から報告しに来てるだけだ」
「じゃあ、別れた報告は?」
「…それは、よく分からないけれど。俺に意識して欲しいからとかそういうのではないのは確かだ」
そうだろうか、と俺は考える。
付き合った報告は相羽が言っていることもあり得るけれど、それなら別れた報告までいちいちする必要があるだろうか。
「それなら相羽君が付き合った時は悔しがってたりしたのかな?って、付き合った経験があればだけれど」
「一度だけ…最初にあいつに彼女が出来た時に、忘れようと思って告白して来た別の中学の女子と付き合ったことはあります。報告した時は喜んで祝福してくれてましたよ」
「そうなんだね。うーん、祝福してたのか。今は勿論その子とは?」
「付き合ってませんよ。というか、一週間で別れました」
「一週間!?短いな」
「ああ、何か別に好きな人が出来たって言われて振られた」
相羽みたいな美人系美形が振られるなんてな。
俺みたいに平凡な奴なら分かるけれど。
「まぁ、俺もあいつへの想いに気が付いていた時でしたから、別れたことに対してショックはなかったですけれど」
「別れた報告は隆一にはしたのか?」
「いや、特にはしてなかったな。ただ、気づかれていたみたいで別れた次の日に遊びには誘われた」
話を聞く限りは、普通かと思うけれど、何かが引っかかる。
それが何かわからないから口にはしなかったけれど。
「とにかくそんな感じだから、あいつが俺の事をどうこうっていうのはないな。ただの幼馴染としか思ってない」
「でも、好きなんだろ?」
「…それは…そうだけど」
「なら、確かめてみたらいいんじゃないかな?」
そう言ったのは、日比谷先輩だった。
「確かめるって言っても、どうやって?」
「勿論本人に直接聞く」
「ええっ!?」
「というのは冗談で」
「…先輩!?」
「ふふ、御免。御免。あのね、誰かが相羽君の事を好きな振りをするんだよ。そして、榊君にそのことを告げる。その時の榊君の反応を見ればわかるんじゃないかな?本当にどうとも思ってないかどうか」
「成程!それはいいかもしれないですね」
「でも…誰が俺の事を好きな役をするんですか?これ以上、俺の思いを知られるのは避けたいんですけれど」
相羽の言葉に日比谷先輩はにっこりと微笑む。
「大丈夫。それなら適任がいるじゃないか」
「え?」
「どこに?」
「ここに」
と言って日比谷先輩が指さしたのは。
「俺!?」
そう、俺だった。
「うん。高松君なら事情も知っているし、榊君とも知り合いだし、適任だよね」
「ちょっ、ちょっと待ってください!俺じゃ駄目ですよ!」
「どうしてかな?」
「だって、俺じゃ、相羽とは釣り合いがとれないですよ。相羽みたいな美人系美形が、俺みたいな平凡でイケメンさの欠片もない奴とじゃ、月とすっぽんですよ。勿論すっぽんが俺で」
「え?」
「え?」
「え?」
俺の言葉に二人は何故か俺の方を凝視してくる。
どうしたのかと首を傾げる俺に、相羽が口を開いて聞いてきた。
「平凡でイケメンさの欠片もない奴って誰が?」
「俺が」
「…無自覚かよ」
「無自覚だね」
「はい?」
「とにかく、今回は僕を信じて一度やってみて。大丈夫だから」
強く言い切る日比谷先輩の言葉に俺は他に方法も今のところ思いつかなかったので頷く。
「じゃあ、決行はいつにする?今日の放課後でいいか?」
「早いな!?」
「善は急げだもんね?」
「ですよね」
「いや、でも俺にも心の準備というものがあってだな!せめて一週間後ぐらいにしてくれ」
「うーん、でもそうだね。その方がいいかもしれない。昨日の今日で好きになったっていうのもあんまり信憑性がないしさ」
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