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第11話
「成程」
確かにそうかもしれないと日比谷先輩の言葉に納得する。
一目惚れっていうのもあるんだろうけれど、信憑性で言うと、もっと関わり合いをもってからの方が信じられやすい気がした。
「じゃあ、一週間後だな」
「その間も二人は出来るだけ接触しておくようにしておいた方がいいね」
日比谷先輩のアドバイスに俺達二人は揃って頷く。
この時は、ただ隆一が相羽のことをどう思っているのかを確認するためだけの軽い気持ちでいた俺達は、それが大変なことになるとは思ってもいなかったんだ。
一週間後。
俺は、隆一に声をかけていた。
「隆一。今日の放課後、空いてるか?」
「ん?おう、空いてるぜ。サッカー部は今日は顧問の都合で休みだからさ」
「そうか。ならよかった。実は、大事な話があるんだ」
「大事な話?」
「ああ」
首を傾げる隆一に、俺は真剣な表情で頷く。
内心は嘘だとばれないか、ドキドキものだったけれど。
「放課後教室に残っててくれるか?」
「お、おう。わかった」
頷く隆一に頷き返して席に座ると心の中で胸を撫で下ろす。
まず第一段階は成功だな。
後は上手く俺が相羽の事を好きだと思わせることが出来ればいいんだけれど。
正直言って上手く演じる自信がない。
緊張して舌を噛みそうだ。
でもこれも相羽の為だと自分に言い聞かせ気合を入れなおす。
普段授業受けているときは時間が長く感じるのに、こういう時に限って時間があっという間に過ぎていくのはなぜだろうな。
瞬く間に放課後になった気分だ。
他の生徒達はそれぞれ部活に行ったり寮に帰ったりするなか、俺と隆一の二人きりで教室に残る。
よし、上手くやるんだぞ、俺!
心の中で自分に言い聞かせて、俺はゆっくりと口を開く。
「あのな、隆一。実は、折り入って相談したいことがあるんだ」
「お、なんだなんだ?好きな子でも出来たとかか?」
「…実は、そうなんだ」
「へぇ、そうなのか!で?相手はどこの高校の子なんだ?」
「…いや、それがこの学校にいるんだ」
「へ?」
俺の言葉に隆一は一瞬きょとんとする。
まぁ、それはそうだろうな。
この学校ってことは自然と相手は女性ではなく男性という事になるんだから。
「え?ってことは…え?」
「ああ、俺は男を好きになったみたいなんだ。…やっぱり気持ち悪いか?」
「……いや。そんなことはねぇよ?相手が男だって好きになったんなら仕方ないしな」
成程、嫌悪感は出してないな。
「で?その相手ってうちのクラスなのか?俺も知ってる奴?」
「いや、うちのクラスじゃないんだ。けど隆一もよく知ってる人で」
「え…?」
微かに隆一の表情が変わったのを確認する。
ここまで言ったんだから気が付いているのかもしれない。
「相羽、なんだ」
「聡…?」
「ああ、初めて見た時から綺麗な人だなと思ってたけれど、最近よく話すようになってから気が付いたら惹かれてて好きになってた。それで幼馴染の隆一に協力してもらいたくてさ」
よし、言い切った。
頑張ったな俺、偉いぞ。
後は、隆一の反応を確かめるだけだ。
このまま、普通に受け入れて応援してくれるなら、今のところ脈はない。
けれど少しでも動揺したりしたら脈はあるってことになる。
出来れば後半を期待して、隆一の反応を伺うと、驚いた表情を浮かべていた隆一は次の瞬間。
ダッ、と音を立てて教室を飛び出していた。
あれえええええ!?
ちょっと待ってくれ、この展開は全く予想してなかった!
と慌てつつ俺も隆一の後を追う。
いったいどこへ行くつもりなのかと後を追いかけていくと、たどり着いたのは音楽室。
ここには、今部活中の相羽と日比谷先輩がいる。
部活終わりに俺が報告に行くことになっていたから二人は普通に部活動に励んでいるはずだ。
中から楽器の音が聞こえてくるのも構わず隆一はガラリッと扉を開けて中へと入っていく。
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