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第13話
「それじゃあ、俺が一週間で別れを告げられたのって」
「あれも、俺がやった。声かけてその気にさせて別れたからって言われて告白されたけど振った。もう用はなかったし」
うん。俺が間違ってた。
隆一はわんこ系だと思っていたけれど、猛犬系だった。
純朴そうな感じだと思っていが、案外計算高かったというか黒かった。
大概のBL本読んで想像力は鍛えたと思っていたけれど、俺もまだまだだな。
「お前に男と付き合う気がないと思っていたから、幼馴染として側にいられるならそれでもいいと思おうとしてたけど。他の男と付き合うのなら、黙って見てなんていられない。他の奴のところへなんか行かせない」
「隆一…」
「好きだ。好きなんだ。頼むから、他の奴のところなんか行くな。俺を選べよ」
「りゅ…んっ!?」
うわあああああっ!!
な、な、生で初めて見たキスシーン、生チュー!!
これってBL!?
BLだよな!?
入学して一週間、ついに、ついに、生BLを見ることが出来た!
おめでとう、おめでとう俺!!
わんこ系もとい猛犬系イケメン×クール系美人。
王道だと言えば王道だけれど、王道もとっても美味しいですごちそうさまです!!
飛び上がって喜びたい気持ちをぐっと堪えて心の中で歓喜歓迎しながら様子を見守り続ける。
隣では、日比谷先輩もにこにことした様子で二人を見守っていた。
「ん…んんっ…はっ…」
「好きだ。聡。愛してる…っ」
「…ちょ…まっ…」
「無理」
「あ、んっ…!…ん…」
噛みつくように口づける隆一に最初は抵抗しようとしていた相羽も目を閉じて受け入れる。
その姿がまた綺麗で、漫画で見るよりももっと美しくて。
なんて、なんて絵になるんだ!
萌えが、萌えが止まらない!
やっぱり、生BLはいいな!俺の心が潤うな!
本当なら、写メに収めて保存したいところだけれど、邪魔になったら悪いから心の中だけでシャッターを切っておこうと決めた時だった。
カシャッ、カシャッ!
と、シャッター音が聞こえて、慌てて隣を見る。
けれど、日比谷先輩はブンブンと首を横に振って僕じゃないよと訴えていた。
じゃあ、誰が、と視線を反対側に向けると、俺達がいた窓の反対側にある扉からカメラを持った生徒が立っていた。
「へへっ、決定的瞬間ゲット!今月の校内新聞のトップはこれだな!」
と、得意げな様子で告げる姿に、隆一と相羽も気が付いて愕然とする。
「あの子、新聞部の子だよ!」
「はっ?新聞部?ってことは」
今の写真が校内にばらまかれるってことか!?
そんな、そんなこと。
「させるかあああっ!!」
叫んで俺は立ち上がる。
「ええっ!?悠斗!?」
「なんでここに!?」
隆一達の驚く声が聞こえるけれど、今はそんなことに構っていられない。
BLっていうのはひっそり静かに愛をはぐくむのが基本なんだ。
勿論オープンにするのもいいけれど、それは本人達が望んで打ち明けた場合だけで。
望みもしないのに、面白半分に見せびらかしていいものじゃない。
その対象が友人だというなら尚更そんな事させるわけにはいかなかった。
「な、なんだよ。あんた…?」
「いいからさっさとフィルム渡せ」
「はぁ?やなこった。欲しいなら追いついてみな」
そう言って、新聞部の生徒は走り出す。
鬼ごっこをご所望か。
そうか、そうか。
それならと、俺は軽く屈伸運動をする。
「高松君?」
「先輩は二人に事情説明の方お願いします」
「う、うん。それはいいけど」
「あいつは俺が捕まえますから」
頷く日比谷先輩ににっこりと笑って告げると、逃げる新聞部の後ろ姿をしっかりと見据えた次の瞬間。
「待てやごらあああああっ!!」
叫びながら全速力で走り出していた。
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