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第16話

「よお、また会ったな」 扉が開き、そう言って姿を現したのは、現したの、は。 「ん?誰だっけ、あれ?」 「昨日の今日で忘れるなよ!!」 「高松君、高松君。あの子だよ。ほら新聞部の」 こそこそっと、日比谷先輩が教えてくれる。 「あー、そういえばいたな」 俺は顔と名前を覚えるのは得意だ。 一度見たら忘れることはない。 ただし、俺の妄想の対象になる人物に限っては、という条件が付く。 大切な友人達の幸せを、ついでに俺の萌えの対象をぶち壊すような奴の顔なんていちいち覚えていられない。 「それで、モブ1君。俺に何の用かな?」 「誰が、モブ1だ!今日は昨日のお礼をしに来たんだよ」 「お礼?いやいや、そんな大したことしてないし、お礼なんて別にいいのに。モブ1君は律儀だな」 「そのお礼じゃねぇよ!!てめぇ、ふざけてんのか!?」 俺達のやり取りを黙ってみていた隆一がこそりと呟く。 「なぁ、あれ完全にからかってないか?」 「ああ、からかって遊んでるな」 「結構いい性格してたんだな。あいつ」 ちゃんと聞こえていたけれど、誉め言葉として受け取っておく事にした。 「って言うかさ。俺本当に何もしてないよな?フィルム渡してもらっただけだし」 「そのせいで部長にみっちり叱られたんだ!今日はその礼を返しに来たんだ。覚悟しろよ!」 覚悟って何を覚悟するんだろうか。 もしかして、喧嘩するってことなのか? と、軽く首を傾げると、ニヤリッと笑って新聞部員もといモブ1君は自分の背後を振り返り声をかける。 「先輩!先輩、こいつです!やっちゃってください!」 って、お前がやるんじゃないんかい!! 多分、ここにいる四人が同時に心の中でつっこんだことだろう。 モブ1君の言葉に応えるかのようにチッ、と軽い舌打ちが聞こえてくる。 「ったく、めんどくせぇな」 なんて、吐き捨てるような言葉と共に現れたのは燃えるような赤色の髪の生徒で。 その容姿を見て、俺は絶句する。 だって仕方ない。 心の中で叫ぶので忙しかったんだ。 不良系超絶イケメンがキターーーーーーッ!!と。 うん、これはこの学園でこの一週間のうちに出会ったどの美形美人よりも美形で、絵に描いた王子様でも叶わないほどに整った男前系のイケメン美形だ。 切れ長二重の涼やかな目元に整い過ぎている鼻と唇の形。 隆一だってこの間の超絶美形軍団の人達だって十分美形だけれど、目の前の生徒はそれに輪をかけて完成された美形だった。 相羽や日比谷先輩みたいな美人系というよりは隆一のような男前系の美形。 俺は一瞬にして視線を奪われてしまっていたんだ。 ここまでの美形に出会えるとは、俺、本当にこの学園に入学してよかった! 目の保養しておこう、目の保養。 と、あまりにも俺が凝視するのを見て、モブ1君が勝ち誇ったように告げてくる。 「なんだよ?ビビって動けねぇのか?」 いや、確かにビビった驚いた。 これだけ男前系イケメンだとカップリングを妄想するのも大変だな。 やっぱり攻め側だろうか? いや、ここは意外に意外せいでいって受けとしてもかなり美味しいかもしれない。 相手がスパダリとかだったら、受け側でも十分行けそうだな。 なんて考えていると、ぽんっと肩に手を置かれる。 振り返ると、真剣な顔をした隆一が立っていた。

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