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第25話

翌日の昼休み。 弁当を食べ終えた俺は、日比谷先輩に声をかけた。 「日比谷先輩。このあと少し時間いいですか?」 「僕?構わないけれど、何かな?」 「えっと、ここではちょっと。折り入ってご相談したいことがあるので体育館裏まで一緒に来てもらいたいんです」 「え?それってもしかして恋愛の相談?」 「実は、そうなんです」 俺のじゃないけれど、と心の中で付け足して頷く。 「え?なんだよ。俺達には内緒かよ?」 「悪いな。隆一達には後でまた話すから、先に日比谷先輩にだけ伝えたいことがあるんだ」 恋愛相談と聞いて不満そうな声を上げる隆一にそう告げる。 相羽は特に何も言わず勿論事情を知っている矢谷先輩は予想がついているのだろうかいつも通り我関せずで景色をぼんやりと眺めている。 「分かった。高松君からの相談だもんね。いいよ、行くよ」 「有り難うございます。今からでもいいですか?」 「うん」 頷く日比谷先輩に俺はほっとしつつともに体育館裏へと向かう。 体育館裏へ向かうとそこにはすでに久瀬川先輩が待っていた。 その姿を確認して、日比谷先輩の足が止まる。 「え?」 「優里」 「なんで…?え?高松君?」 動揺して俺の方へと視線を向ける日比谷先輩に俺はがばっと頭を下げた。 「御免なさい、先輩!俺の恋愛相談って言うのは嘘なんです!」 「嘘?」 「俺、久瀬川先輩からも話を聞いて、やっぱり一度ちゃんと話をした方がいいと思って」 「話って…」 まだ動揺している日比谷先輩から俺は久瀬川先輩へと視線を移す。 「それじゃあ、後はお願いします」 「ああ。有り難う」 俺はもう一度ゆっくりと頭を下げると、二人を残してその場を立ち去る。 そして、校舎の角を曲がったところで、そっと二人に気づかれないように身をのぞかせて様子を見守った。 だって、やっぱり気になるんだから仕方ないよな。 決して、新たな生BLが生まれるかもしれない瞬間を見たいなんてそんなこと思ってるわけじゃない。 うん、少しも、ちっとも、小指の先にも思ってない。 多分、きっと。 「…優里」 「何?高松君まで使うなんて卑怯なことするね」 「卑怯か。確かにそうかもしれない。でも、俺は卑怯なことをしてもお前とちゃんと話がしたかった」 「僕には話す事なんて何もないって言った筈だけど?」 「俺にはある」 「…しつこいな本当」 「しつこくても構わない。お前が話を聞いてくれるまで何度でも行動に移すつもりだからな」 相変わらず冷たい日比谷先輩の態度にも、今日の久瀬川先輩は怯むことはなかった。 やっぱり昨日話しておいたことが良かったのかも知れない。 いつもと違う、久瀬川先輩の怯まない態度に、日比谷先輩も少し戸惑った様子を見せた後、深い溜息をついた。 「…分かったよ。話したいなら好きに話せば?」 「ああ。有り難う。優里」 「別に」 「…俺は、お前が何故俺達から俺から離れたのか。その理由が知りたかった」 「かったって事は今はもうどうでもいいって事だよね」 「違う、そうじゃない。知りたかったから、彼から聞き出したんだ。その理由を」 「彼って、高松君?」 「ああ。でも彼を責めないでくれ。俺が無理やり頼み込んで聞きだしたんだ」 少し驚いたように告げる日比谷先輩に、久瀬川先輩は俺を庇うように言ってくれる。 「理由を知って、ちゃんと話す機会を作ってもらった。誤解を解いておきたくて」 「誤解?何が誤解なのかな?」 「…俺は、優里。お前が好きだ」 「っ!?」 皮肉気に返す日比谷先輩に久瀬川先輩はストレートに告白する。 日比谷先輩は大きく目を見開いて息を呑みこんでいた。 「何から話そうか、迷ったけど。一番伝えておきたいのがこれだった。俺は優里が好きだ。昔からずっと、この気持ちは何も変わっていない」 「…嘘だ」 「嘘じゃない」 「嘘だよ!」 「嘘じゃない」 「嘘だ!何?桜木君に告白して振られでもしたの?それで自分に気があった僕にやけになって告白して来たってわけ?」 「違う、そうじゃない。俺は桜木の事をそんな風に思ったことは一度もない。俺が想っているのはお前だけだ」 「そんなの嘘だ!!僕が一番つらかった時に側にいてくれなかったくせに…!!」 吐き出すように叫んだ日比谷先輩の体を久瀬川先輩が強く抱きしめた。 うおおおっ、萌える…! って、だから、そうじゃない、そうじゃない。 「すまなかった。それは俺が悪い。…お前はずっと笑ってたから。その笑顔が作られたものだと気づけなかった。お前がつらい思いをしていたのも気づけずにいた。一番近くにいたつもりでいたのに情けないな…」 「圭…」 「でも、信じ欲しい。俺はお前を放って桜木を一番に見たことなんて一度もない。俺が一番に見ていたのは、優里、お前だけだ」 「そんな…そんなのは…」 「信じられないなら信じてもらえるまで何度だって伝える。だから、俺から離れないで欲しいんだ」 「僕…僕は…」 「優里。…優里?どうした?顔色が…」 「な、なんでもな……」 「優里…?優里っ!?」 久瀬川先輩の叫び声によって俺は異変を察知し、慌てて駆け寄っていった。 「どうしたんですか久瀬川先輩!?」 「高松!優里の調子が…っ!」 そう言う久瀬川先輩の腕の中で日比谷先輩はぐったりとして目を閉じていた。 「先輩!とりあえず、保健室に日比谷先輩を!」 「ああ!」 俺の言葉に頷いて、久瀬川先輩は日比谷先輩の体を姫抱きに抱き上げると保健室まで足早に向かっていく、俺も急いでそのあとをついて行った。

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