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第27話
「というわけで、これからは久瀬川先輩も一緒になったから」
翌日の昼休み、俺はそう言って隆一や相羽に説明する。
矢谷先輩は大体事情は分かっているだろうから特に説明る必要もなかったけれど。
「いや、それは別に構わないけど、何がというわけなんだ?」
「それは俺が後で説明してやる。おめでとうございます。日比谷先輩」
事情がよく呑み込めていなさそうな隆一にそう言って、相羽は日比谷先輩に祝いの言葉を贈る。
日比谷先輩は少し照れ臭そうにはにかんで、有り難うと返していた。
それから、相変わらず我関せずを貫いていた矢谷先輩の方へと視線を向ける。
「ところで、昨日圭に聞いたんだけれど、圭の事呼び出したのは矢谷だったんだってね?」
「あ?それがなんだよ?」
「別に。なんでもないよ」
矢谷先輩にそう言った日比谷先輩は今度は俺の方へと視線を向けてきた。
「ところで高松君」
「はい?」
「矢谷の運命の恋の相手誰だかわかった?」
「ぶっ!?」
突然の日比谷先輩の言葉に矢谷先輩は飲んでいた飲み物を吐き出す。
「それがまだ全然わからないんです」
「そうなんだね。矢谷は照れ屋だからなー」
「日比谷!てめぇは何言いだしてやがる!?」
凄む矢谷先輩を無視して日比谷先輩は言葉を続ける。
「高松君は矢谷の運命の恋の相手が知りたいんだよね?」
「はい」
「それってどうしてなのかな?」
日比谷先輩の問いかけに、俺は一瞬返事に困る。
それは矢谷先輩程の美形なら相手も絶対凄い美形だろうと思うし、腐男子としては矢谷先輩と相手とがイチャイチャしている姿を見てニヨニヨしたいというのが本音だけれど、それを流石に本人の前で言うのに困ったというのもある。
けれど、それだけじゃない気がしていたんだ。
俺がどうしても矢谷先輩の相手を知りたい理由が何かほかにあるような気がして、でもそれが何かはわからなくて返答に困っていた。
そんな中俺達のやり取りを黙ってみていた久瀬川先輩が何かに気が付いたように口を開く。
「そうか。成程、そういう事か」
「久瀬川先輩?」
「俺の想像が正しければ、矢谷の恋は前途多難だな」
「久瀬川!?てめぇまで何を!?」
「圭の想像通りだと思うよ。相手は相当に鈍いみたいだからね」
「そうみたいだな」
久瀬川先輩も矢谷先輩の想い人が誰か気が付いたらしく、日比谷先輩の言葉に頷く。
久慈川先輩まで気が付いたという事は二人が知っている一年生だろうか。
「そんなに鈍い相手なんですね。矢谷先輩の想いに気が付かないなんて勿体ないな。早く気づけばいいのに」
俺が本心で思った事を口にした瞬間。
ゴンッ。
「いだっ!?」
思いっきり脳天に痛みを感じて俺は声を上げる。
殴ったのは矢谷先輩。
「矢谷先輩!?なんで殴るんですか!?」
「知るかっ!」
頭を押さえて涙目で抗議する俺に矢谷先輩はフンッと横を向いてしまう。
その姿も美形で美人な矢谷先輩なら様になっててちょっと可愛いなとも思ってしまうけれど、頭は痛い。
俺は、矢谷先輩のためを思って言ったのにな。
むう、と唇を尖らせて殴られたところを撫でる俺の姿を見て、日比谷先輩と久瀬川先輩が。
「やっぱり前途多難だな」
「だよね」
と話し合ってたことには気づかなかったけれど。
そんなこんなで昼食をとっていた俺は、ふいに視線を感じて、箸を止めて振り返る。
ん?誰かの視線を感じた?
というか、今の視線はつい最近にも感じたことがあるような?
けれど振り返った先には誰の姿もなくて、俺はしきりに首を傾げた。
「悠斗?どうかしたのか?」
そんな俺の様子に気が付いた隆一が声をかけてくれた。
「いや、なんか視線を感じた気がしたんだけれど…」
「視線?」
「ああ。隆一は感じなかったか?」
「いや、俺は特に。聡は?」
「いや、俺も何も感じなかったけれど」
隆一の言葉に相羽も首を横に振る。
「そっか。じゃあ、やっぱり俺の気のせいかな?」
「お、なんだ、なんだ?お前の隠れファンか?」
「あはは、まさか。矢谷先輩や久瀬川先輩じゃあるまいし。俺みたいな平凡な容姿の奴に出来るわけないだろ」
なんて隆一の冗談を笑い飛ばしていたんだけれど。
その時は気のせいにして再び昼食をとることにした俺は、まさかあんなことになるとは思ってもいなかった。
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