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先生はソファで寛ぎ周りをぐるっと見回している。 「あんまりジロジロ見ないでよ。恥ずかしいじゃん」 コーヒーを淹れながら、俺は先生の様子を見ていた。 この人って、やっぱりカッコいいよな。モテるんだろうな…… 女にも男にも。学校での評判や保健室にいる時の先生の様子を思い浮かべ、目の前にいるプライベート感丸出しな先生と比べてみた。やっぱり見れば見るほど別人だ。雰囲気が違うだけでこんなに変わって見えるんだな。 少し見惚れながら、コーヒーを運ぶ。 「お、ありがとう。コーヒーいい匂い…… 」 先生はクスッと笑った。俺に見せる笑顔が特別に見えてしまう。自分の部屋に先生が居ることが非日常でちょっとドキドキしてしまった。 「先生って、笑った顔も可愛いんだね」 照れ隠しなんだか動揺したんだか、思わずそんな事を零すと「大人捕まえて可愛いってなんだよ!」と怒られてしまった。 「それを言うならさ、志音くんは子どもっぽくないよね?」 そう言った先生は意味ありげな顔をして俺を見る。子どもってどういうこと? そもそも高校生は子どもと言うより大人に近いんじゃないの? 「高一だよ? 子どもだけどさ…… 高校生にでもなりゃもう大人みたいなもんじゃないの? それって褒めてるの? バカにしてんの?」 俺が言うと「そうかもな…」と笑ってコーヒーを啜った。結局どっちなんだよ…… 確かに俺は周りの同級生を子どもっぽいと見下してるところはあるかもしれないけど、でも先生に大人っぽいと言ってもらえたようにも感じてちょっと嬉しかった。 「先生って陸也って名前なんだね。見かけによらず逞しい名前」 「そうか? 陸也って逞しいイメージかな?」 首を傾げる先生を見て可愛いなって思う。 「陸也って呼んでいい?」 「なんでだよ。ダメだよ、俺はこれでも先生だぞ? 調子にのるな」 今更先生ぶって怒られてしまった。 「志音…… 今日本当はしんどかったんだろ? もう大丈夫か?」 急に優しい顔になった先生が俺を見つめる。先生は分かっている。俺が今日どんな気持ちであそこにいたのか…… でもその目は反則だよ。急に心配なんかしないでよ。優しくされたら泣きそうになるじゃんか。 「……失恋って、想像以上にしんどいね。でも、友達でいてくれるって言われて俺、凄い嬉しいんだ。嫌われたと思ってたから……」 実は今日、保健室でも俺は泣いてしまった。保健室で泣くのはこれで二回目。 失恋をして悲しくて辛くて泣き、そして失恋をした相手に「大事な友達」と言われ嬉しくて泣き…… その度に先生は見ない振りしてくれてたんだと思う。 今日も無言でベッドに入る俺を何も言わずにそっとしておいてくれた。 「先生、ゴメンね。今日も勝手に保健室で休んで……」 素直に謝ったら「気にすんな」と笑ってくれた。 「それと、ありがとう。悠さんの店に先生が来てくれてよかった。今も一人でいたらしんどかった…… 先生がいてくれてよかった……」 やっぱり涙が零れてきてしまう。 俺が人前で泣くなんて あり得ない……そう思っていたのに調子狂う。 でも我慢できなかった。 どんどん涙が零れて止まらない。 床に座り込んで泣く俺を先生はそっと抱きしめてくれ、涙が落ち着くまで背中を優しく摩ってくれた。

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