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腐れ縁

次の日、昼休みが終わった頃だろうか── 突然保健室のドアが開いたと思ったら志音が泣きながら入ってきた。今度は昨日と違い大粒の涙を隠そうともせず、無言でベッドに潜る。 ……あからさまな情緒不安定。大丈夫か? と心配になった。 志音がここに来るってことは、少しは俺を頼ってくれてるのだろうか? 涙が落ち着けばじきに教室に戻るだろうと思い、俺は声をかけず見守ることにした。 知らないふりをして机に向かい書き物をしていると、ベッドから出てくる気配がする。とくに何も言わずにそのまま志音は保健室から出て行った。 復活できたのかな? それならそれでいいと思う。 仕事を終えて帰宅する。外に出るとまた悠の事が頭に浮かんだ。もう何年も会っていない。それでもこうやって思い出したのも何かの縁かな…… と、俺は悠の店へ足を向けた。 四年前と全然変わらず、ちゃんとその場所に悠の店はあった。 少しドキドキしながら扉を開ける。カウンターに一人客が見えるだけで、ガラガラな店内。すぐにカウンターの中にいる悠が俺に気が付き、大きな声を出した。 何も変わらないその姿にホッとする。 悠に近づきながら、カウンターにいる一人の客の後ろ姿に志音の面影が重なった。 四年も音沙汰無しだった俺に悠は怒るでもなく、久々の再会に素直に喜んでくれ、俺も嬉しかった。 「 陸也、今日は一人なの?」 「ん…… ちょっと人恋しくなって。なんてな」 久しぶりに交わす軽口も心地よい。冗談ぽく言ったものの、今日は志音と接したことで人恋しくなったのは事実だった。 「なに可愛いこと言っちゃってんの。俺じゃダメ?」 「相変わらずだな、悠は……」 相変わらずな悠に自然と笑みが溢れる。でも以前のように、悠と軽い気持ちで体を重ねる気分にはならなかった。 しばらくすると、悠が隣の客にちらちらと目配せを始める。別に俺は誰かをあてがって欲しいわけじゃない。それはわかってくれていると思うんだけどな…… 悠の視線に隣の客もこちらを見た。俺が目を向けると、目が合ったのはよく知った顔だった。 ……驚いた。

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