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子守唄

ゆらゆら……ふわふわ 心地良い揺れに意識が少し戻る。ここ…… どこだ? とぼんやり目を開けるとすぐそこに高坂先生の顔があった。 そうだ、先生いたんだっけ! 俺は一気に目が覚め、その瞬間に少し乱暴にベッドの上に落とされた。 「うぉっ?」 驚いて思わずうわずった声が出てしまう。 「あ! ごめんな。気持ちよさそうに寝てるからさ…… ベッドにそっと運んでやろうと思ったんだけど、そっと運ぶには俺の力が無さすぎた」 そう言って高坂先生が笑った。 俺の方がデカイのに…… この人は俺をここまで運んでくれたんだ。 「先生、ごめん。重かったでしょ?」 申し訳なく謝ると、悪戯っぽく笑い「もう疲れたから一緒に寝させて」なんて言って先生もベッドに入ってきた。 俺のベッドはキングサイズなので、男二人でも余裕で寝られる。 ゴソゴソと接近してくる先生にちょっと戸惑い緊張するも、不思議といやらしい気持ちにはならなず俺は自然と体を任せた。 先生は何故か俺を抱き枕のように抱きしめ「志音、おやすみぃ」と一言呟く。すっぽりと俺の頭を胸元に抱き竦め、何も言わずにいる先生。 トクン、トクン、トクン…… と、リズムよく先生の心臓の鼓動が聞こえてくる。それがまるで子守唄のように俺を眠りに誘った。 朝、コーヒーの匂いに目を覚ます。 はっきりしない意識で軽く目を擦りながら、俺はベッドから体を起こした。ぼんやりしながら、久しぶりに熟睡したな…… なんて考えながらリビングに向かった。 コーヒーメーカーに出来上がっているコーヒーを愛用のマグカップに注ぎながら部屋を見渡すけど、既に先生の姿はなかった。 テーブルの上にメモ書き── 『ちゃんと登校する事。コーヒーご馳走さま』 走り書きだけど、意外に綺麗な先生の字を見て、俺もコーヒーを飲みながら学校へ行く支度を始めた。 学校行ったら先生にちゃんとお礼言わなきゃな……

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