13 / 165
好きになった人
教室に入ると竜太君が真っ先に声をかけてくれた。
竜太君…… そう、俺が人生初の失恋をした相手、渡瀬竜太君だ。
凄い人見知りで、慣れた人じゃないと自分からは話しかけてこない。とても静かで、でも拘りの強そうな瞳。独特の雰囲気が凄い魅力的で俺は恋に落ちたんだ。誰もがすぐに俺に興味を持つ中、竜太君だけは違っていた。最初はそれがちょっと不満で接近したのもあったけど、話してるうちに時折見せる表情や仕草が凄く愛おしく思えて、気が付いたら好きになっていた。
ドキドキしたり、男が好きだなんて気持ち悪く思われるんじゃないか…… とか不安に思ったり、振り向いてもらえない事にもどかしく思ったり……
結局のところ、俺が竜太君に心を乱されてる事に俺自身認めたくなかったんだ。
結果色々回りくどいことをやってしまって、傷つけてしまった。俺は恋が実る事なく玉砕しちゃったんだけど……
竜太君は俺の事を「大事な友達」だと言ってくれた。酷いことをしてしまった俺を許してくれた。
現に今日も俺に笑顔で話しかけてくれてる。
こんなに嬉しいことはない。
俺は「友達」と呼べる人が今までいなかったから……
学校生活、楽しく過ごせそうな気がする。
竜太君はきっと俺の事を傷付けるような事はしないはず。信じられる友達ができたことが凄く嬉しかった。
俺は放課後、保健室へ行く。
昨晩は思いっきり甘えてしまって、気恥ずかしかった。酒が入ってたからなのか…… 俺が他人にあんなに自分をさらけ出してしまった事が今だに信じられなかった。
保健室に入ると、何人かの生徒が高坂先生と雑談をしていた。
チラッと先生は俺を見るけど、雑談をやめない。
俺はすぐに昨日のお礼がしたかったけど、諦めて真っ直ぐベッドに向かいカーテンを閉め、ドスンと横になった。
横になりながら、何故だかカーテンの外に聞き耳を立ててる自分がいた。
「先生は女いねぇの?」
「嘘だ! モテるでしょ?」
「男子校って野郎ばっかでダメだ」
「なあなあ、合コンしようぜ」
くだらない事ばっか言ってる。早く先生と話したいな。あいつら早く帰らねぇかな? そんなこと思いながら、おれは少し眠った。
しばらくすると、保健室が静かになってることに気がついた。
あ、あいつら帰ったのかな? 顔を外に向けると、高坂先生の顔がすぐ近くにあって驚かされた。
「……! なに?」
高坂先生はにこにこして俺の頭に手を置いた。
「元気になってるかな〜って思ってね」
やめろよ、恥ずかしい……
「大丈夫だよ。昨日はありがとう…… うん、本当にありがとう」
俺がお礼を言うと先生は満足そうに微笑んだ。そして「よかったな」と言ってくれた。
ともだちにシェアしよう!