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撮影
撮影がもうすぐ始まるとの事で、俺は真雪さんに呼ばれ仁奈と離れた。
俺を見る真雪さんの顔が心なしか怒っているように見える。あれ? なんか怒らせるようなことしたかな? ピリピリしてる真雪さん、怖いから嫌なんだよな……
「志音、あなた気をつけなさいよ! 馴れ馴れしく仁奈と話し込んじゃって…… 周りは あいつ何様? って顔して見てるわよ。普通、女優さんとあんな一緒にいる事なんてないんだから。仁奈のマネージャーには志音と話したいって仁奈の意向だから気にするなって言われたけど……全く! 気にするに決まってるじゃない! ね?」
「ごめんなさい。気をつけます……」
仁奈の方から話しかけてきたんだし、何で俺が怒られんだよ……と喉まで出かかったけどそれを飲み込む。機嫌の悪い真雪さんには何を言っても通じない。
そうこうしてるうちに、撮影開始の声がかかりいよいよ撮影がスタートした。
俺はジーンズだけはいて上半身裸。「相変わらずいい体ね」と真雪さんに背中を撫でられ、俺は前に進んだ。
仁奈は全裸で白い布の上に横になり、片肘をつき上半身を上げる。自分のもう片方の腕で胸を際どく隠し、俺はその背後に一緒に横になり仁奈の肩にキスを落とす。背後から仁奈の腰を片腕で抱くようにして仁奈の前を隠す…… 香水はそんな俺らの顔の横に置かれている。
際どい……それにこれ、体勢めちゃくちゃしんどい。
シャッター音がバシャバシャと響く中、目線を変えながらまた違うポーズを指定される。
今度は俺が足を広げて座る膝の間に仁奈がすっぽり収まる感じに座り、俺が背後から抱きしめ仁奈の首筋に顔を埋める。
先程から何パターンも際どいポーズで撮らされてるけど、どれも俺は仁奈の体のどこかにキスをしてるので、俺の顔は俯き加減で隠れていてきっと誰だかわからないだろう。
今度は俺が仰向けに横になり、仁奈が上にかぶさって乗る。俺は仁奈の腰に手を回し香水の瓶を仁奈の腰の上で持つ。俺の上に乗った仁奈は、俺の額にキスをして、俺は笑顔で仁奈を見る。
これファンが見たら卒倒しないか? 大丈夫なのかな? ラブラブ全開な恋人同士を演じるのは楽しいけど、世間様の反応がちょっと怖いな。
仁奈には悪いけど、これといってムラムラする事もあるわけがなく、撮った写真もどれも凄くカッコよく撮れていた。心配したようないやらしさもなく芸術的な仕上がりに、俺も大満足だった。
真雪さんも機嫌も直って満足そうにしていたから安心した。
何はともあれ、真雪さんが喜んでくれるのが一番だから……
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