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変化

この時から週に一度、離れに会いに来てくれる母さんに甘えるのを俺は楽しみにしていた。だけど俺が六年生になる頃から少し様子が変わってきた。 いつもは優しく頭を撫でながら話していた母さんだったけど、急に布団に入ってきて俺の体を撫で回すようになった。こそばゆくて気持ちが悪くて拒んでも、やめてくれないどころかエスカレートしていく。今思えば周りの六年生と比べて、俺の身体は大きく大人びていたからだったのかもしれない…… 初めての射精は母さんに弄られてのものだった。 週に一度の母さんに甘える時間は、この時から母さんに弄られる時間に変わった。そして母さんの友達だという人たちと出掛けさせられる事が度々あった。 ようはデートみたいなもの。 一緒に出掛けて、その相手の言うことを聞いていればお小遣いが貰える。そのお小遣いを母さんに渡せば家計が助かるから……とかなんとか言われて、俺は素直にそれに従っていた。 デートと言っても食事をしたり買い物の荷物持ちをしたり、本当にそれだけ。でも相手はそれだけでも嬉しいらしく、いつも俺の容姿を褒めてくれたりデートをしたことに対してお礼を言ってくる。 俺はあまり深く考えることもなく、ただただ気分がいいと思っていた。 「志音はカッコいいから一緒に歩いてると優越感に浸れるのよね」 ある時相手にそう言われ、成る程、そういうことか……と気が付いてしまった。自分から進んで母さんの友達と連絡を取り合い出かけるようになってからは、毎晩のように母さんが俺のいる離れに来るようになった。されるがまま体を弄られる毎日。知らない相手とデートするのはそれ程嫌じゃなかったけど、正直母さんのこの行為だけは嫌で嫌でしょうがなかった。母さんに対する嫌悪感は日に日に増していき、もう限界だった。 そんな生活が続き、俺は中学生になった。 この頃には母さんが離れに来ることは減ったけど、今度は母さんの男友達だという人達とも会わせられるようになった。男とデート? と少し疑問に思ったけど、でも男と出掛けるのはチャラチャラした女と出掛けることより数倍楽しかった。たまに手を繋いだり肩を組まれたりなんかすると、なせだかドキドキして緊張する。男同士の方が距離感に戸惑ったりドキドキしたりして、俺にとっては刺激的で楽しかった。 中学生にもなると、男女問わず出掛けた相手からキスを強請られたり体の関係を求められるようになった。 小学生の頃から母さんの友達だと言われ、知らない大人と出掛けるようになっていたけど、この頃にはもう この人達は友達ではなくて客なんだと俺は理解していた。 でも幸いな事に俺が相手をしていた客達はみんないい人ばかりで、乱暴な事をする人はひとりもいなかった。 俺が嫌だということは決して強要してこない。俺から何かをする事はなかったけど、だいたいは相手の望むまま体を委ねた。 その時に気が付いてしまったんだ。 俺は女が相手だと全くその気になれないという事に… 感情が揺さぶられるのも同性の男に対してだけ。男女が恋愛関係になるのが普通だと思っていた俺は、何かがおかしいと不安になった。客と淫らな行為をしたり、心にも無いおべっかを言ったり、今までしてきたことのせいで俺は普通の人間と違ってしまったんだ……と、そう思ったんだ。 「………… 」 気がつくと先生は俯いて俺の手を握っていた。

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