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愛されたい…
ある日学校でクラスメートから呼び出された──
仲の良かった男子から。
何かと思ったら「好きだ」と告白をされた。男同士だけど良かったら付き合ってほしいって……
この時の俺は自分の性に悩んでいた時期だったから、自分と同じ、しかも仲の良い友達も一緒だったんだとわかったことが物凄く嬉しかった。嬉しくて少し興奮しながら、その友達にすぐOKの返事をした。そいつのことが好きだったのかと聞かれれば、きっとそうじゃなかったと思う。ただの友達。でも仲も良かったし友達として好きだったから、付き合ってもいいって思ったんだ。
でも俺の返事を聞いたその友達は、もじもじと恥じらっていた姿を一変させ、瞬く間に意地の悪い顔になった。
「やっぱり志音ってホモだったんだ! お前ら聞いたか? 」
振り返ると数人のクラスの男子がニヤニヤしてこちらを見ていた。
……?
なに? なんで?
数人の男子に囲まれ、嫌な視線を注がれる。
俺が男の客と腕を組んで歩いてる姿を見かけた奴がいて、どうやら事実を確認したかったらしい。
このことがきっかけで、そいつらの俺に対するイジメが始まった。
ホモがうつるだの、病気になるだの、上履きを隠されたりノートを破かれたり……でもクラスの女子はそんな俺と仲良くしてくれた。
俺のことを助けてくれてるのかと思って嬉しかった。
放課後カラオケに誘われたり、ファミレスでお茶したり。女子とこうやって遊ぶのも別に嫌じゃなかったし、陰湿なイジメをするような男どもと比べたらよっぽどサッパリとしていて楽しかった。
「志音と一緒にいるとさ、結構振り向かれたり注目されるんだよね。背も高くてそこらの男子と比べたって断然カッコいいから目立つじゃん? 超優越感。 そうそう、こないだ違う学校の友達に彼氏かっこいいじゃんって羨ましがられちゃった。ウケるよね! 彼氏じゃねえって! 志音って誘えばいつでもホイホイついてくるからさ──」
たまたま聞いてしまった……
そっか……俺は見た目がいいから隣に置いときたいだけって事なのか。
そういや前にも同じこと言われたじゃん。忘れてた。
女ってくだらね。
やっぱり 友達だと思ってたけどそうじゃなかったのか……
結局家でも学校でも、俺はひとりだ。
客と遊んでる時は唯一楽しく過ごせていたけど、これだって結局は金もらって付き合ってるんだから同じことだよな。
お手伝いの陽子さんだけだ。俺を心配してくれてるのは。
陽子さんは、客と会うのをやめろと言ってくれる。こんな事はおかしいって言ってくれる。
でも、嫌なんだ。求められないと俺が寂しくて死にたくなるから……嘘でもいいから、俺のことを必要だと言ってくれる人なら何でもいい。
せっかく心配してくれている陽子さんの言葉も、俺には全然響かなかった。
この時の俺は、
愛されたい
誰も愛さない
必要とされたい
誰もいらない
信じたい
でも誰も信じられない……
そんな感情が渦巻いていて、投げやりに毎日を過ごしていた。
そして中学三年生になった時、俺は真雪さんと出会うんだ──
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