ぐいぐいと手を引っ張られ、俺のマンションに向かって歩く。 「……なぁ、どうしたの？ 先生？ 何か言ってよ」 「………… 」 マンションに到着し、鍵を開けて部屋に入る。 部屋に入ったと同時に、これでもかってくらい先生にキツく抱きしめられた。 へ？？ ちょっと…… 「先生？ 何？ ……え？ もしかして泣いてんの？」 先生は俺を抱きしめながら、泣いていた。 なんだよそれ。 同情？ 「ちょっと？ なんで泣いてんだよ。同情？ 同情なんかされてもムカつくんだけど…… 」 「ごめんっ！ そうだよな……同情、なのかわかんないけど、お前を抱きしめたくてしょうがなくなった……」 目を赤くした先生はそう言ってしばらくの間俺をぎゅっと抱きしめた。 「今日、泊めて」 結局そのまま俺の部屋で飲み始めた先生が機嫌よくそう言った。 さっきまでベソベソと泣いてたのが嘘みたい。 「何気に志音の家、俺の家より学校に近くていいんだよね」 ……なにそれ。 「俺と一緒にいたいって言うなら泊めてあげてもいいけど、そんな便利いいって理由じゃちょっとなぁ 」 こんな時にそんな理由で、少しバカにされた気分。 「今夜はお前と一緒にいたいんだよ……」 急に真剣な顔をして、ご丁寧に俺の顎にまで手を添えて先生は言った。 「ちょっと、先生そういうのやめて……びびった」 本気でキスされるかと思った……なんだよ、からかわれてるんだ俺。 先生はニヤっと笑って「志音がそう言ったんだろ？ これならいいでしょ？ 泊めてね」と、俺を見つめてそう言った。