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モデル敦

今日は敦と一緒の仕事が入ってるからと事務所に呼ばれていた。敦は最近忙しくしていて会うのは久々だった。 学校が終わり、そのまま俺は事務所に向かった。 「あ! 志音! 相変わらずイケメンだな」 元気いっぱいに俺に抱きついてくる敦。 前々から思っていたけど、敦はスキンシップが激しい。嫌ではないけど誰にでもこうなのかな? 嫌がる人もいそうなのに……とちょっと思った。 「敦も今日もかっこいいよ 」 そう答えてあげると、鼻を鳴らして「当たり前だ!」と笑う。 「ほんと久々だよな。志音、なんか顔つき変わった? あれ? 髪型かな?」 そう言って俺の頭をくしゃくしゃにしてくる。 こうやってヘアスタイルを崩してくるのもいつものこと。最初はウザくてムカついてたけど、もう慣れて何とも思わなくなった。 「敦やめて。これでもちゃんとセットしてんだから俺。それに髪型は変えてねえって」 敦としばらく談笑していると真雪さんが入ってきた。 「ほら、早く行くわよ」 真雪さんに急かされ、敦と二人で車の後部座席に乗り込んだ。 目的地は近くのスタジオ。 ファッションブランドの販促用カタログの撮影だそうだ。 主にビジネススーツや小物類。 後部座席に並んで座った敦が俺の顔を見て文句を言った。 「なんで大人の男のイメージのスーツの撮影に志音も一緒なんだよ。こいつ高校生じゃんか」 確かに敦の言う通り。俺なんかでいいのかな? 「文句言わないの! 私から見たら志音の方が大人の色気あるわよ」 そう言って真雪さんが笑った。 「志音は先方からのご指名なのよ。その日本人離れしたルックスに惚れたって仰ってたわ。私も志音はスーツ似合うと思うわよ」 敦が口を尖らせ不満そうにしている。 「まぁまぁ、敦くん そんな顔すんなよ。敦だってかっこいいよ。拗ねちゃだめだめ 」 「こんにゃろっ!」と言って敦が俺の頭をグリグリする。そんな風にふざけ合ってるうちに、俺たちはスタジオに到着した。 担当者に挨拶をし、軽く打ち合わせ。 俺と敦が着用するスーツが部屋の隅に並んでるのを真雪さんと確認し、ヘアメイクを済ませると撮影が始まった。 敦は普段おちゃらけてるけど、いざ撮影が始まると別人みたいになる。 流石としか言いようがない。改めて仕事モードの敦を見て俺は気を引き締めた。 あんなフランクにしてくれてるけど、敦は俺の大先輩だ。

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