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目
敦が注文したコース料理はデザートまで付いていて、甘いのはちょっと……なんて言う敦の分まで食べさせられた。
「なんだよ、食わねえならコースなんて頼むなよ!」
俺は食え食えうるさい敦に負けて、二個目のティラミスを頬張る。
まぁ、俺は甘いのは嫌いじゃないしいいんだけど、さすがに二個目はキツイな。
「でもほんと何でコース料理?」
コースなんてデートかお祝いの時くらいだろ? 別に酒飲んでツマミ程度でよかったのに……
「お前、さっきからなんで? なんで? ってしつこいね。志音見てたらデート気分味わいたくなったんだよ……これで満足か?」
何それ……
敦は俺をそういう目で見てたのか?
いや、冗談か。
「もうやめてよ。でもこんなの滅多に食べないから、ありがとう。美味しかった」
そうお礼を言うと、満足そうに敦は笑った。
追加でワインを頼み、しばらくそれを二人で飲む。
俺が知らない間に敦が会計を済ませていて、俺たちは少しほろ酔いで外に出た。
ほんと美味しかったな。今度は先生と来てみたい。
……なんてな。
軽く酔っ払った敦が俺にしな垂れかかる。こいつと飲むと大概こうなる。別にたいして酔ってないけど、くっつきたがりで距離感のおかしい敦は毎度こんな感じで絡んで来るんだ。先程と違ってご機嫌だから、まあいいか……
「んーー! 志音いい匂いだな。ふふふ」
「んっ……」
突然歩きながら俺の首筋に鼻を突き付けてすんっと匂いを嗅ぐ敦。不意打ちだったからゾワッとして思わず声が出てしまった。
敦はぱちくりと俺を見てからニヤっと笑うと、俺を横のフェンスに押し付ける。
押されてる肩が痛かった。
「……志音って、感じやすいんだね」
敦の声が耳元でそう囁く。
いつも冗談でこういう事をよくやる敦。
でも、今の敦の目…… ちょっと怖かった。
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