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上手く…
事が終わり、二人でベッドで微睡む。
四年前は深く考えず、ただ快楽を求めて悠を抱いた。
それなのに今はなんだ?
俺は志音を思って悠を抱いた。
最低だ……
今頃 気付いた。
俺、悠の事好きだったはずなのにな。
「……ははっ 」
思わず乾いた笑いが出てしまった。
俺の腕の中にいる悠はさっきから黙っている。後ろから抱いているから俺からは悠の表情はわからない。何となく気まずさを感じる。それもきっと俺のせいだ。
「……よかったの? 陸也はこれで……」
悠が背を向けたまま、沈黙を破りぽつりと俺に聞いた。
「………… 」
「こういうの、もうやめるんじゃなかったの?」
いや…… そんな事は言った覚えはない。
違う、悠は俺を見てそう感じて言ってくれているんだ。
なんだよ、悠には敵わないな。見透かされているのがわかり情けなくなった。
「陸也?……志音なんだろ?」
「は? なんの話だ?」
「……誤魔化すなよ。わかるんだよ」
相変わらず俺に背中を向けたままの悠が、声色も変えずに言葉を吐き出す。悠には全てお見通しなんだ。
どうしよもなく胸がチクチクした。
「 そっか……でも俺にはどうしようもないから」
申し訳なさで胸が痛んだ。悠に対して失礼極まりないことをした。
「悠……ごめんな」
謝ることが余計に酷いことだともわかっている。でもそれしか言葉が浮かばなかった。
俺が謝ると、悠がゆっくりと俺の方を振り返り優しく長いキスをした。
「謝るなよ陸也……謝られると虚しくなる」
ふわっとした笑顔を浮かべ、悠はまた俺に背を向け背中を丸める。
俺はその背中にもう一度「ごめん」と心の中で謝った。
しばらくの間、俺は悠の背中を抱いていた。
「なぁ、悠……なんで志音だって思ったんだ?」
悠は俺の方を向き直り、肘をついて俺を見ながらクスッと笑った。
「志音を見る目付きが違う。志音に笑いかける笑顔が違う……志音の話を聞きながら泣いてるお前を見て、すぐにわかったよ」
恥ずかしくてこの場から逃げたくなる。
「なんだよ。そんなバレバレなのかよ。みっともねえな、俺。いい歳してさ……」
ほんと、悠には敵わない。やっと自分が恋愛モードに変わってきたのなら良いことじゃないかと悠は笑う。本心で言ってくれているのか揶揄われているのか、どっちにしたって恥ずかしいのに変わりはない。
「そんなに 知られたくないんなら、もっと上手くやらないと」
そう言って悠は俺に背を向けて笑った。
「………俺みたいにな」
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