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悠の思い

あれは中学生の時── 俺は歳下の男に恋をした。 一目惚れって本当にあるんだと驚いたのを覚えている。 それも男相手にだ…… 彼は二年も歳下だから、何も接点もないままあっという間に俺は卒業を迎えた。 俺の初恋は遠くから見てるだけで呆気なく終わった。 終わったとそう思っていた。 まさか彼が同じ高校に入学してくるとは思ってなくて、入学式で見かけたときは泣きそうになるくらい嬉しかった。 そして俺の友達の弟とその彼が友達だと知り、俺は必死で仲良くなれるように近付いたんだっけ…… 話してみると思ってた通りに気さくで優しく、いい男だった。 おまけに気が合う。 こんなに嬉しいことはない。 更にこいつは俺と同じ、男が好きだという事を悩んでいた。 俺も同じだ、そんなに悩むことはないと俺は励まし、二人だけの秘密を共有できた事に喜びを感じた。 俺の中ではこいつは特別な存在で、嫌われるのが怖くてこの距離感を保とうとしてたけど、ついにそれを壊してしまった。 俺の部屋で二人っきり── ゲームに夢中なふりをしてたけど、どうしようもなく息が上がった。二人だけの空間に、俺は耐えられなくなってしまったんだ。そして我慢が効かなくなって強引に押し倒してキスをした。 彼は拒むどころか、うっとりとした顔で「男同士でもキスって気持ちがいいんだな」なんて可愛くはにかむもんだから、もう止められようもない。そのまま俺は体を弄り、半分硬くなったソコを握った。思いの外可愛い声に興奮し、夢中でお互いを弄りながら射精した。 他人に弄られイったのはこれが初めて。 それからはちょくちょく会っては二人でこっそり抜き合いをした。 あいつにとっては、性に目覚め一番そういう事に興味がわいていた時期だったんだと思う。きっと気持ちがいいことが出来れば相手は誰でもよかったんだ…… たまたま同じ嗜好の人間が近くにいたから……そんな軽い気持ちでそういった行為をしていたのだろうけど、俺にはそれで十分幸せだった。好きとかそうじゃないとか、そんなのもきっと関係ない。身近にいるいやらしい事を共有できる便利な奴くらいにしか思われてなかったとしても、それでもよかった。 あいつがどう思おうと、俺はあいつの特別になれた気がしたから幸せだった。 月日が流れるのはあっという間。 寂しいけど、俺が卒業してしまえばもうこれっきり……お別れだった。 告白? いいや、あいつは俺の事はそういう目で見てないのは明白だったから。 もう会うこともないだろうし、俺の都合のいい思い出だけ残るんだ。 そう、これでいい…… そう思って俺はこの想いを自分の中に閉じ込める。 大切な初恋、大切な思い出として、大事大事に心の奥に封印した。 それなのに、なんの恨みかまた再会してしまうんだ…… そして別れ、また再会。 神様は俺の初恋をなかなか終わらせてくれないらしく、何度も別れては再会し、飛んだ腐れ縁にここまでくると俺はもう笑うしかなかった。 今までは、気持ちはなくとも俺を求めて抱いてくれてた。欲を発散するためだけとはいえちゃんと俺のことを見ていてくれてた。 でも今日は違った。 あいつの見る先に俺はいなかった。 俺じゃない 違う奴を思って抱くなんて初めての事だった。 好きだから…… 誰よりずっと見てきたからこそ何でもわかってしまうのも寂しいもんだな…… 俺の淡い恋心はもう、伝えるには遅すぎた。 でもあいつが幸せになれるなら俺はなんだっていい。 初めっからこの恋は諦めていたんだから。 高校を卒業する時に、いい思い出として心の奥にしまい込んだのだから。 寂しく思うことなんてない。 大丈夫……どうってことない。

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