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思いがけないキス
今日は仕事がないけど、学校から直接事務所に来て何となく時間を潰す。
一人で誰もいない部屋に帰るのも寂しかった。
事務所で宿題をやったり、真雪さんに勉強教えてもらったりはよくやる事……でも、今は誰もいない。
俺はなんとなしに雑誌を読んで時間を潰す。
雑誌に目を落とすも内容は全く頭に入っては来ず……先生の事ばかり考えてしまった。
あの時、抱いてくれなかったけどキスはしてくれた。
きっかけは俺だったけど。
ちゃんと抱きしめて優しくキスをしてくれた。
そのぬくもりを思い出し、そっと自分の唇に指を添えた。
「………… 」
泣きそうになっちゃう優しいキス。こんな気持ちは始めてだ。
「志音? どうした? すげえ色っぽい顔しちゃって……」
突然敦に肩を叩かれ、現実に戻る。恥ずかしさで顔が火照った。
敦は俺の隣にストンと座り、ん〜っと伸びをしてから、無遠慮に俺に抱きつく。この距離の近さ、もう慣れたとはいえ急だと毎度びっくりするから嫌だった。
「はっ? なに?………っ 」
ぐっと抱き寄せられ驚いて敦の方を向くと、唇が触れそうなくらいの距離で目が合い思わず俺は息を飲んだ。
敦の目が……怖い。
俺が驚いて固まっていると、ふっと敦が笑い額を俺の額にくっつけてくる。そのままキスをされそうな距離に緊張した。
「志音さぁ……俺と付き合わね?」
付き合う? 敦と俺が?
……え?
敦の言葉が突然すぎて全然理解が追いつかなかった。
だって敦の恋愛対象は女じゃないの?
「……!?」
頭の中が混乱してる隙に、敦に唇を奪われた。
敦にきつく抱きしめられたままのしかかられ、敦の舌が遠慮なく俺の口内に侵入してくる。
「んー!……んっ…ん……」
なんとか敦から逃れようと、抱きすくめられた腕を突っぱねようよするも全然力が入らず、敦はビクともしなかった。
嫌だ! 嘘だろ? 敦……やめて!
ヂュ…といやらしく音を立てて俺から離れていく唇を敦がペロリと舐める。その視線は俺から離れてくれない。
怖い。
涙が出てくる……
「なんだよ! ……急になにすんだよ……」
震える声で敦に訴えると、また敦は俺を抱きしめた。
今度は優しく包み込むように抱きしめる敦に俺はどうしたらいいのかわからなかった。
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